草野絵美の個展『EGO in the Shell』がニューヨークでスタート
2025年の秋、草野絵美の没入型個展『EGO in the Shell: Ghost Interrogation』がニューヨークの新しいデジタルアートプラットフォーム、SuperRareのギャラリー「Offline」で開催されます。本展覧会は、アニメーションの金字塔とも言われる『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』との公式コラボレーションによって実現されたものです。
10月8日の開幕を前に、多くのアートファンの期待が高まっています。草野はこの展覧会を通じて、サイバーパンクの世界観からインスピレーションを得て、自我や記憶の再構築に関する問いを提示します。ロウアー・マンハッタンのギャラリー空間が、記憶、監視、アイデンティティが交差する独特な「場」へと変貌することでしょう。
草野は自身の顔や身体をAIに学習させたカスタムモデルを使用し、存在しない「架空の幼少期」を生成する過程を作品に取り入れています。このプロジェクトは、以下の三つの主要なテーマから構成されます。まず、AIによる虚構の幼少期を描く映像作品群、次に『攻殻機動隊』の未来像を探求する作品群、そしてCRTモニター彫刻やホログラムを用いた没入型インスタレーションです。これらの要素が組み合わさることにより、観客は記憶と虚構、過去と未来の境界を揺るがす体験をすることができます。
草野はこの展覧会について「このプロジェクトは、記憶の脆さと自我の不安定さをテーマにした儀式です。観客が“永続”と“無常”の両義性を体験することを望んでいます」と語ります。
他にも、展示内での体験は、クリエイティブな表現とともに記憶やアイデンティティに関する考察を促すものです。草野は、「今日の世界では、精神と身体、過去と未来、有機と人工の境界が溶けつつあります。『攻殻機動隊』がその解体を予見してから、私たちはいかに変化してきたのでしょうか」とも述べています。
展示構成
展覧会はそれぞれ異なる2つの階で開催されます。上階では、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』からインスピレーションを得た世界観と草野のデジタル・アイデンティティを繋ぐ空間が設置されます。ここではアニメ文化や日本的な追悼の形式、AI時代の個人データの脆さについて考えるきっかけを提供します。
さらに下階「Ghost Interrogation」では、サイバーパンク的な尋問室をモチーフにした没入型の展示が待ち受けています。CRTモニターが積み重なって生み出す曼荼羅のような彫刻は、草野のプライベートな記憶やAIによる再構築を映し出します。ホログラフィックに登場する草野自身が、「尋問する者」と「尋問される者」として同時に演じ、その監視カメラは観客を展示空間に取り込みます。この体験を通じて、観客は「自我」が持つ多様な意味について思索を深めることとなるでしょう。
草野絵美は、これまでにも多くの国際的な館で展示され、彼女のデジタルアートは瞬く間に評価を集めました。彼女の代表的なコレクションには、Neural FadやTechno Animism、Melancholic Magical Maidenなどがあり、これらの作品はすぐに完売となっています。草野はデジタルアートという新たな表現方法を通じて、そのエコシステムを再定義する重要なアーティストとしての地位を確立しています。
まとめ
『EGO in the Shell』は、サイバーパンク、AI、記憶、アイデンティティの問題提起を織り交ぜた豊かな展覧会です。草野絵美によるこの革新的な作品は、現代社会における私たちの存在と自己認識を問い直す機会を提供するでしょう。多くの人々がこの体験に触れ、自己や世界を考え直すきっかけとなることを期待しています。