消費者から生産者へ — HUMATERIALの挑戦
2024年2月29日、ファッション界に新風を吹き込む「HUMATERIAL(ヒューマテリアル)」が、そのデビューコレクションを発表します。このプロジェクトは、消費者をただの「使い手」から「作り手」へと転換させることを目指しており、持続可能で循環するファッションの実現に取り組んでいます。
HUMATERIALの理念
「HUMATERIAL」という名前は、「HUMAN(人間)」と「MATERIAL(素材)」を組み合わせた造語です。このブランドは、環境に配慮した天然素材やリサイクル素材を使用し、製造段階だけでなく利用段階でも質の向上を図ることにチャレンジしています。そして、この取り組みを通じて、環境負荷を最小限に抑えつつ、持続可能な社会を実現することを目指しています。
アパレル産業は非常に複雑なバリューチェーンを持ち、その中で単一の解決策を見出すことは難しいです。しかし、いくら「品質の高い製品」を生み出しても、大量生産と大量消費のサイクルから抜け出さなければ、持続可能な社会は遠いままです。HUMATERIALはまず、服の消費のあり方自体を見直すことが重要だと考えています。
服との新しい関係性を築く文化
消費者がブランドからの一方的な流れで服を受け取るのではなく、ケアや修繕を通じて自らが服に関わる体験を重視します。その結果として、服を「素材」として再評価し、使い手から生産者へと進化することを目指しているのです。このような育成されたカルチャーを通じて、これまでとは異なる関係性を持つことが期待されます。
アパレル産業の現状と課題
この挑戦は、旗揚げ人である峯村昇吾が過去に繊維専門商社で見た大量廃棄の現実が出発点となり、その後、ファッションテックベンチャーへの転職を経て、課題意識を持つようになりました。彼は、アパレル産業のサーキュラーエコノミーの研究を進める中で、専門機関や経産省でもバリューチェーンの全体像が把握できていない事実を発見しました。これにより、数々のリサーチを重ね、産業の課題を特定する必要性を痛感しました。
サーキュラーダイアグラムの発表
峯村氏が作成した「サーキュラーダイアグラム」は、生産、利用、回収・中間処理・再資源化の3つのカテゴリで構成されており、2022年に公開されました。この図の制作が進む中で、服の大量廃棄から大量回収への移行の兆しが見えました。しかし、これもまた大量生産・大量消費を前提とした話です。服の生まれる量が減らない限り、いかに回収システムを拡充しても不十分です。このため、まずは適量生産・適量消費に転換することが必要です。
新たなコレクション、ヒューマンフットプリント
「HUMATERIAL」は、第一弾コレクションとして「ヒューマンフットプリント(HFP)」を発表します。これは、既に人々のクローゼットにある服にプリントを施すもので、ワークショップを通じて服と人との関係性を再構築することを目指します。HFPは、消費者が自己の軌跡を再認識する手段でもあります。
今後の展開として、「HUMATERIAL」は新たな素材としての価値を創出することを目指しています。サステナブルな未来に向けた挑戦は、ここから始まります。詳細は公式サイトでご確認ください。
メンバー紹介
- - 峯村 昇吾(デザイナー): 元FABRIC TOKYO、在学中に造形構想株式会社を立ち上げ。
- - 木村 まさし(文化中毒者): エモーショナルな表現で文化を構築。
- - 原口 さとみ(編集者): フリーランスで情報発信のサポーター。
- - 足立 豊樹(アートディレクター): サステナブルデザインを専門にする。
- - 坂上 萌(リサーチャー): デザインとフィールドワークを通じて調査。
造形構想株式会社の役割
造形構想株式会社は、社会変革と持続可能性のためのデザインを研究するサーキュラーデザインファームであり、様々な企業や大学と連携し、サステナブルな実践を推進しているのです。