FSAが発表したFinTech実証実験ハブの結果と今後の展望
金融庁は、フィンテックを活用した革新的な取り組みの促進を目的に、2017年に「FinTech実証実験ハブ」を設立しました。このハブは、フィンテック企業や金融機関が新たな実証実験を行う際に抱えがちな不安や懸念を払拭する役割を果たしています。今回は、令和8年2月に公表された第13号案件の実証実験が終了し、その結果が公表されました。
実験の概要と目的
今回実施された実証実験では、主に暗号資産に関連するマネー・ローンダリング対策について、民間事業者間での情報連携を行う新たな枠組みを検証しました。具体的には、暗号資産交換業者が詐欺関連と疑われるアドレスやトランザクション情報を共有し、それに基づいて共同で情報の収集・分析を行うという形式です。
この実験は2023年の3月から5月にかけて行われ、以下の企業が参加しました。
- - 株式会社日立製作所
- - 株式会社あおぞら銀行
- - JPYC株式会社
- - GMOコイン株式会社
- - その他、多数の企業
実験の結果と重要な発見
本実証実験を通じて次のような結果が確認されました。
1. 情報共有の重要性
参加した暗号資産交換業者間で、疑わしいアドレスやトランザクション情報を共有することで、個社では把握しきれないリスクの兆候を見つけ出せる可能性が確認されました。このことにより、業界全体でマネー・ローンダリング対策を強化できる道が開かれました。
2. 機械学習とリスト照合
リスト照合型の処理と機械学習を組み合わせることにより、既存の制裁リストに載っていないリスク兆候を探索できることが明らかになりました。AI技術の導入が、マネー・ローンダリング対策においても有効であることが分かりました。
3. モニタリングシステムの有効性
事後モニタリング、オンライン即時評価、トークンモニタリングという三つの機能が実務において十分に運用可能であることが確認されました。これにより、迅速な対応が可能となり、暗号資産や電子決済手段の運用が一層安全になります。
4. 追加調査の必要性
しかし、実験の中で分かったのは、モニタリングシステムからのアラートだけでは疑わしい取引の届出や取引制限を行うにあたっては不十分であるという点です。資金の流れや他の関連情報からの追加調査が必要であることがわかりました。
法的観点からの助言
金融庁は、実証実験を通して得られた知見を基に、法的観点からの助言も行いました。特に、疑わしい取引の届出においては、特定の事業者がその責任において行う必要があること、及び機械学習モデルを用いる場合は、その根拠が明示される必要があるとされました。
また、個人情報に関する取り扱いについても、同意に基づくデータ提供の重要性や、個別の事案に応じた利益衡量が求められることも指摘されています。これらの助言に基づき、参加企業はデータの共有やガバナンスを行っていく必要があります。
未来への期待
今回の実証実験結果は、暗号資産及びその関連技術の今後の発展に向けた大いなる一歩と言えるでしょう。フィンテック関連企業は業界全体での協力を通じ、マネー・ローンダリング対策を一層強化し、信頼性の高い金融エコシステムを構築していくことが期待されます。今後も「共助」による簡素な対応が実現し、より安全なフィンテック環境の構築が進むことが期待されています。