音で放射線を判別する新型検出器
東京科学大学の学生、貫輪美博(ぬきわ みひろ)さんが、視覚障害者でも利用できる放射線検出器を開発しました。この装置は、放射線のエネルギーを音の違いで表現することで、視覚障害を持つ高校生でも放射線の種類を識別できるように設計されています。実際には、筑波大学附属視覚特別支援学校にて10回の実証授業が行われ、その有効性が確認されました。
開発の経緯と背景
視覚障害者が理系分野を学ぶ上での課題は多岐にわたります。特に、最先端科学の情報が少なく、学びの機会が限られているという現状があります。そこで、貫輪さんは自身の高校時代の素粒子研究の経験を活かし、視覚障害のある学生に理系教育の機会を提供するために、この放射線検出器の開発に取り組みました。
開発には、全盲の当事者やその支援者からのフィードバックを取り入れ、実際にその意見を反映させながら具体化していく方針を採用しました。特に、2025年1月と3月には、ダイアログ・イン・ザ・ダークに所属するスタッフとの意見交換が行われ、その結果が製品に活かされています。
実証授業の実施
2025年3月、筑波大学附属視覚特別支援学校で110分間にわたる授業が行われました。授業では、次のような本格的な放射線実験を通じて、学生たちが実際の放射線を音で聞き分ける経験をしました。
1.
宇宙線や環境放射線の音を聞き分ける
2.
ラジウム線源と5種類の放射性鉱石からの音の比較
3.
遮蔽効果の調査:ラジウム線源と検出器の間に銅板を挿入し、その効果を検証
授業の中では、全盲の高校生たちが、音を通じてベータ線が銅板で遮蔽され、ガンマ線が通過することを発見し、自ら考察を深める姿が見られました。また、得られたデータを触覚グラフとして材料化し、情報を理解する助けになりました。
今後の展望
教育と研究を重視しながら、貫輪さんらは今後も検出器とカリキュラムの改善を続けていく方針です。全国の盲学校や科学館での出張授業を通じて、より多くの学生に学びの機会を届けることを目指しています。さらに、障害の有無にかかわらず、すべての中高生が科学に興味を持てるようなプログラムの整備や企画も進めていく予定です。
加速キッチンの活動
加速キッチンは、宇宙や素粒子に関する課題を探求する大学生や大学院生を中心に活動しており、安価な素粒子検出器の配布とオンラインメンター制度を設けることで、国内大規模な素粒子研究ネットワークを構築しています。
視覚障害者のためのこの放射線検出器は、その技術革新と考慮された設計によって、多くの可能性を秘めています。今後どのように発展していくか、ぜひ期待したいところです。
関連リンク
謝辞
本プロジェクトは、高エネルギー加速器研究機構や一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの協力を受けて実施されました。また、筑波大学附属視覚特別支援学校での授業実施にあたる支援も受けました。
お問い合わせ
加速キッチン合同会社
広報担当:須藤舞子
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