日本とアフリカをつなぐ人材育成の新たな展望: TICAD9イベントレポート
2025年8月20日、JICA横浜センターにて、日本とアフリカの産業界を担う人材育成をテーマにした第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のイベントが開催されました。このイベントは、独立行政法人国際協力機構(JICA)と国際大学、神戸情報大学院大学が合同で行ったもので、オンラインとハイブリッド形式で実施されました。
ABEイニシアティブのこれまでとこれから
本イベントの主要テーマは「ABEイニシアティブのこれまでとこれから~更なる架け橋人材の育成を目指して~」。2013年にスタートしたこのプログラムは、約1,900名のアフリカの若者を育成し、日本とアフリカ間のビジネスと相互理解を深める重要な役割を担っています。
今回の会議は、これまでの成果を振り返り、次世代に向けた新たな取り組みを議論する重要な機会となりました。
開会の挨拶と期待の声
TICAD9の開会に際して、JICAの三原特別アドバイザーが挨拶をし、ABEイニシアティブが果たしてきた役割について語りました。また、来賓として自民党衆議院議員の逢沢氏も登壇し、このプログラムへのさらなる期待を述べました。
講演とパネルディスカッション
イベントは、3つの章に分かれた講演とパネルディスカッションから構成され、参加者たちは熱心に耳を傾けました。
まず、JICAアフリカ部の松村計画・TICAD推進課長が、ABEイニシアティブの進展を振り返りました。引き続き、3名の卒業生によるABEイニシアティブ3.0の成功事例が紹介されました。
具体的には、JICAの緒方研究所の貝塚研究員が、修了生がアフリカの各分野でどのように活躍しているかを示す事例を3つ紹介しました。そこで出てきた共通点は「ポジショナリティ」であり、これは修了生が意思決定を行う立場で活躍するための要因の一つだとのことです。
アセンティアホールディングスの松本取締役は、修了生が共に取り組むビジネスの success stories を紹介し、アフリカで展開するコインランドリーのフランチャイズ例を用いて、現地のニーズに応じたビジネスの重要性を語りました。
さらに、アクセルアフリカの横山CEOは、帰国後も日本との関係を維持できることの重要性を強調し、「我々も日本とアフリカをつなぐ架け橋となる」との意気込みを示しました。
ABEイニシアティブ4.0とTOMONI Africa構想
続いて、松村課長は「ABEイニシアティブ4.0」の具体的な方針として、今後6年間で3,000人の人材育成を目指すことを明らかにしました。
特に、日本企業との連携を強化するためのインターンシップや、日本語教育の充実が重要なポイントです。また、TOMONI Africa構想により、日本・アフリカのユースキャンプなどを通じて人材の双方向的な流動を促進する計画も発表されました。
パネルディスカッションの実施
後半のパネルディスカッションでは、神戸情報大学院大学の内藤副学長がモデレーターを務め、ABEイニシアティブの修了生や日本人学生らと共にディスカッションが行われました。修了生たちは「ABEイニシアティブでの経験が人生を変えた」と口を揃え、多文化間のコミュニケーション能力が向上し、自信を持つようになったと語りました。
結びに
国際大学の加藤副学長が締めの挨拶で述べた通り、今後日本とアフリカの若者が対等な関係でともに成長していくための努力がますます求められます。このイベントは、ABEイニシアティブが築いてきた成果を再確認するとともに、次のステージへ進むための重要な一歩となることを期待します。JICAは、今後も若者の可能性を引き出し、より良い未来を共に創るために尽力していく所存です。