水道民営化の新たな視点を提供する書籍
2024年8月27日、株式会社パレードから新刊『よくわかる水道民営化契約内容と海外の潮流』が全国の書店で発売されます。本書は、水道民営化についての包括的な理解を提供することを目的としており、著者の村上武士氏が水道ビジネスの収支構造や国内外の事例を整理し、新たな観点を提示しています。
本書の構成と内容
本書は全7章から成り立っています。第1章では、水道事業に関する基礎知識やビジネスの経済的側面を紹介。他の章では、日本国内の水道事業の状況や、現在直面している課題について詳しく解説しています。また、コンセッション契約やPPP(官民連携)方式の比較なども行い、民間運営の目的と方法を探ります。
特に第4章では、水道コンセッション契約の主な条件について触れ、どのように運営が行われるのか、またどのようなリスクが存在するのかを明らかにします。さらに第5章では、国内の過去の事例を挙げて水道事業と他の分野のコンセッションを比較検討し、成功と失敗の要因を探ります。
第6章では、世界銀行の方針や海外の成功事例を通じて得られた教訓を紹介し、日本の水道民営化にどのように活かすべきかを提言しています。最終章では、著者自身の提案がまとめられ、将来的な水道運営の在り方を模索しています。
市民との対話の重要性
本書の主なメッセージは、市民が水道民営化に対して関心を持ち、積極的に議論や意見交換を行うことの重要性です。著者は、賛成や反対の立場にとらわれず、より深い議論を重ねることで、適切な契約条件や運営方針を決定できるという立場を示しています。市民が意見を表明することによって、企業の運営品質の向上にもつながるといった考えも強調されています。
ボリビア水紛争から学んだ教訓
本書は著者の村上氏がボリビアの水紛争から得た知見を反映させています。1997年、ボリビアの水道民営化が実施されましたが、市民やNGOとの衝突が起こり、最終的には水道事業が再公営化されました。しかし、村上氏が後に訪れた現地では、実際には市民にとっての「敗北」であったと認識されていることが明らかになりました。適切な議論がなされなかった結果、劣悪な水道状況が続いていることが示されています。
村上氏は、日本でも水道民営化の議論が同様の失敗を招く可能性があることを憂慮しています。このため、市民が興味を持ち、内容を理解し、未来を見据えた建設的な議論が必要であると訴えています。
著者のプロフィール
村上武士氏は、技術士として上下水道部門に関わり、全国でのインフラ事業において長年の経験を持つ専門家です。彼は途上国での水道関連プロジェクトに幅広く関与し、その知見を持って本書を執筆しました。国際的な視点を取り入れた議論が、今の日本の水道制度に与える影響を考えさせられる内容となっています。
書籍情報
本書は四六判で188ページ、定価は1,870円(税含む)です。ISBNコードは978-4-434-34139-7で、各書店やオンラインストアで購入可能です。ぜひ手に取って、現代の水道問題について考える一助となればと思います。