新たなフィクションが誕生 『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』
2025年4月17日、金子薫が新たな作品を世に送り出す。その名も『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』。この小説では、出口の見えない迷路のようなデスゲームが展開される。河出書房新社から刊行されるこの作品は、現代社会に蔓延するドラッグや嘘、そしてそれに翻弄される人々を描いている。
ストーリーの舞台 「奇天座」
この物語の舞台は、増殖する高層ビルに囲まれたスラム街〈奇天座〉。そこでは、究極の幻覚剤〈ロロクリ〉が広がり、住人たちは次々と獣や虫の姿になり、その快楽に溺れていく。しかし、この場所でただ一人、人間であり続けようとする西尾というキャラクターがいる。彼は、自分自身の究極の幻を求めて彷徨う。
著者・金子薫の経歴と評価
金子薫は、2014年の『アルタッドに捧ぐ』で文藝賞を受賞しデビュー。その後も数々の賞を受賞し、文壇での存在感を高めていった。彼の作品には、一貫して「ここは一体どこなのか、何に向かっているのか」というテーマが見え隠れし、その作品は現代社会の困難な状況を描写する力を持っている。特に新作『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』でも、彼のシニカルな視点がいかんなく発揮されている。
物語の本質 — キーワードとテーマ
本書には「成るや成らざるや奇天の蜂」という物語が含まれ、人間たちがドラッグと嘘に翻弄されてゆく様子が描かれ、さらに彼らを操る売人との関係も浮かび上がる。『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』は、個々の存在や思考、声が物語に取り込まれる現代の黙示録的な作品だ。道化、幻覚剤、変身、言葉の力など、多様なテーマが織り込まれている。
海外でも注目 『スカピーノと自然の摂理』
収録作の一つである「スカピーノと自然の摂理」は、フランスの月刊誌「TEMPURA MAGAZINE」で早くも翻訳されるなど、国内外での注目も高い。ここでも、金子薫の精緻な文体が輝きを放ち、世界が交錯する様子を描き出している。
道化の視点と批評の複合性
金子の作品は道化の視点やそれを俯瞰する視点が描かれ、それらが共鳴しあって新しい規範が生まれる可能性を示唆している。この表現は上智大学の小川公代教授による remarks でも取り上げられており、「創造的で批評的な道化が生まれる土壌を開拓している」と高く評価されている。
新たなる豊穣なフィクション体験
金子薫の新刊『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』は、現代の混沌とした世界に対する緻密な観察の結果として生まれた作品だ。彼の描く不穏な物語世界は、あなたを深いフィクションの旅へと誘うだろう。ぜひ手にとって、その極上の体験を味わってほしい。出版情報は以下の通りだ。
書籍情報
- - 書名: 愛の獣は光の海で溺れ死ぬ
- - 著者: 金子薫
- - 発売日: 2025年4月17日
- - 定価: 2200円(税別 2000 円)
- - ISBN: 978-4-309-03957-2
- - 装丁: 佐藤亜沙美
これからも金子薫の動向に注目していきたい。