近年、テクノロジーの進化により、自動車産業においてもAI(人工知能)の導入が進んでいます。しかし、AIを採用することで、新たな安全性に関する課題も浮上しています。そんな中、一般財団法人日本規格協会は、2025年6月16日付けで自動車のAI安全管理に関する国際規格「ISO/PAS 8800: Road vehicles — Safety and artificial intelligence」を発行しました。この規格は、日本全国の自動車メーカーや関連企業にとって、重要な指針となることでしょう。
ISO/PAS 8800は、自動車業界におけるAIシステムの安全性を管理する初の規格です。これにより、従来の強固な安全規格であるISO 26262(機能安全)やISO 21448(安全性)と組み合わせて、AIの安全性を確保するためのフレームワークを形成します。特に、電気・電子(E/E)システムが搭載される量産車両において、AIの不具合やエラーによる安全リスクを反復的に低減し、その安全性を見極める手助けとなります。
この規格の監修は、ISO TC22(自動車)SC32(電子・電装部品及びシステム)WG14(安全性とAI)の専門家によって行われており、信頼性の高い内容となっています。規格の購入は、税込76,571円でA4判360頁の対訳版を提供しています。
また、PAS8800は、あくまで自動車のAIに特化した規格であり、自動車の要素でないAIの開発は対象外となります。しかし、関連する安全ガイダンスがない場合においても参考にできる資料として、多様な業界での活用が期待されます。特に、医療や産業ロボット、航空など、AIの安全性が求められるさまざまな分野に対しても有益でしょう。
さらに、2025年9月1日には、ISO/PAS 8800の説明会が開催される予定です。講師には、規格の開発および監修に関わった株式会社デンソーの桑島洋氏が招かれ、ISO 26262やISO 21448との関係性についても解説が行われる予定です。自動運転システムの安全性に関する国際規格の知識を深める絶好の機会となります。
最後に、日本規格協会は1945年に設立され、標準化技術の普及を目指して多岐にわたる事業に取り組んでいます。自動車業界に限らず、広範な分野で規格の開発や普及活動を進めており、品質や安全性向上に貢献しています。