新たなIT部門の役割を探る
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が公開した「企業IT動向調査2026」は、957社の上場企業からの回答をもとにIT投資やIT戦略についての実態を調査・分析しました。この報告書は、現代のDX(デジタルトランスフォーメーション)とAIの時代においてIT部門が果たすべき役割についての重要な示唆を提供しています。
DX推進の目的の変化
本年度の調査では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の目的が「守り」から「攻め」に移行していることがわかります。昨年度に比べ、「既存事業のコスト削減」という目的は減少し、逆に「既存事業の収益力向上」や「新規事業への進出」が重要視されるようになっています。これは、企業が業務効率化だけでなく、新たな収益を生み出すことを重視し始めていることを示唆しています。
提言1:IT部門の変革推進
調査からは、IT部門が今後ますます重要な役割を担うことが求められていることが浮き彫りになりました。特に、生成AIの普及を背景に、IT部門は技術の導入に留まらず、現場の取り組みを推進し、全社的な成果に結びつけるリーダーシップが期待されています。AIの活用事例を率先して示し、自ら業務変革のロールモデルとして機能することが求められます。
ITコスト増加とQCDの悪化
今年の調査では、IT予算が増加する一方で、円安や人件費の高騰、既存システムの維持によるコストの増加が影響を及ぼしています。そのため、企業はIT予算の配分や開発体制の見直しが急務となっています。約70%の企業が内製と外部委託をバランスよく活用する方針を取っています。
提言2:最適化のリーダーシップ
今後は、IT部門がコスト、データ、人的資源を全体的な視点で最適に運用することが求められています。事前・事後評価を実施し、業務の価値を評価する企業の割合が増加しています。データを最大限に活用し、業務効率を高めることが重要です。特に、DXの推進において、データ活用状態を維持することが不可欠です。
セキュリティ対策の重要性
セキュリティ対策の重要度は年々増加し、経営の主要課題として認識されています。しかし、実際の取り組みは機器の設置や従業員研修に偏りがちで、インシデント発生を想定した復旧手続きや訓練は不足しています。
提言3:事業のレジリエンス強化
IT部門は、セキュリティ対策を単なる抑止に留まらせず、事業の継続性を確保するための戦略的リーダーシップを発揮する必要があります。すべての部署が協力し、事業の持続性や競争力を維持する観点から取り組むことが求められます。
調査の背景と目的
「企業IT動向調査」は、1994年度以来、ITユーザー企業の動向を把握するために実施されており、経済産業省の監修を受けています。最近の調査は2025年9月から10月にかけて実施され、956社からの貴重なデータを収集しました。
JUAS情報プラザと過去の調査結果
JUASは情報発信の一環として、様々な報告書をウェブ上で公開しています。過去の調査結果も含めて、IT活用の方向性を見極めるための有用な情報が豊富に揃っています。詳細についてはJUASライブラリーの公式サイトをご覧ください。
日本の企業のIT戦略に関して、今回の調査が提供する知見は今後の企業変革の指針となることでしょう。そして、IT部門が新時代において如何に変化し、他部門との連携を深めるかが、今後の企業の成長に不可欠な要素となるでしょう。