トークイベント「脱偏見シリーズ」第2回を振り返る
2025年6月13日、オンラインで行われたトークイベント「脱偏見シリーズ」vol.2が盛況のうちに終了しました。このイベントは、認知症に対する社会の偏見を乗り越え、より豊かな理解を促すことを目的としたプロジェクトの一環とされています。
本イベントのゲストとして、株式会社ヘラルボニーの代表取締役である松田文登さんにご登壇いただきました。松田さんは、「異彩を、放て。」という理念のもと、知的障害を持つアーティストたちの作品を広める活動をしています。
このトーク異彩の本質は、知的障害のある人たちの才能を「異才」ではなく、その人が持つ「彩り」として扱うことにあります。松田さんは、人々が持つ「見方」を根本から変えることの重要性を説き、自らの体験を交えながら、福祉とアートの融合がどのように社会に影響を与えるかを語りました。特に、彼は「福祉はマイナスをゼロにするのではなく、プラスの価値を提供するものであるべきだ」と強調しました。
松田さんの発言の中で特に印象的だったのは、認知症に関する言葉の持つ偏見についてです。かつての「痴呆」という表現が含む侮蔑のニュアンスを指摘し、認知症を「当たり前の存在」と受け入れることの大切さを訴えました。このような視点から、認知症をただ「怠惰や恥部」として捉えるのではなく、より健全で積極的な理解を促す必要があるとされています。
会の進行は、issue+design代表の筧裕介さんが担当し、ファシリテーターは但馬武さんが務めました。イベントの冒頭では筧さんがissue+designが取り組んできた認知症プロジェクトの背景や意義について語り、なぜ映画化に挑戦するのかを説明しました。
イベントの後半では、松田さんが自身の兄の存在がどのように彼の人生に影響を与えたのか、そしてその結果どのように彼がヘラルボニーを設立するに至ったかを語りました。「兄が私にとっての原体験」とする彼の言葉は、多くの人々に深い感動を与え、聞く者の心に強く残りました。彼は自身の理念だけではなく、双子の兄弟である松田崇弥さんと共に、福祉の新たな文化創造へと挑戦していることを強調しました。
松田さんは講演の中で、最近話題になったダウン症の原因となる染色体の除去に関するニュースにも触れ、それに伴うネット上の反応が偏見を助長するものであると鋭く指摘しました。「実際、当事者の声はかき消されている」と彼は言い、共に誤解を乗り越えていくことが必要であると強調しました。
イベントの最後には、次回のイベントの告知もあり、引き続き、認知症や社会課題に対する理解を深めるものとなることが期待されます。また、松田さんは、福祉に関連する「財団の設立」を目指していることを明かし、その詳細についても語りました。未来に向けた展望を語る彼の姿勢には、参加した多くの人々が感銘を受けたことでしょう。
映画『認知症世界の歩き方』の制作は、日本国内のみならず、フランス、中国、アメリカなど、計8カ国でクラウドファンディングを展開し、支援を募っています。
今後も、認知症を巡る理解を深める活動が続けられ、多くの人々にとっての新しい明るい社会の形成に繋がることを期待しています。アーカイブ動画はYouTubeで公開中ですので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。