炎症性腸疾患(IBD)患者の多国籍調査の結果
炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎とクローン病の患者が抱える課題を浮き彫りにするため、日本と海外の患者によるオンライン調査が実施されました。株式会社グッテと米国のGlobal Healthy Living Foundation(GHLF)が協力し、203名の患者から集めた回答をもとに、診断までの期間や学業、就労に与える影響について詳しく見ていきます。
調査の背景と目的
調査は、特に世界IBDデーにあわせて行われ、日本、アメリカ、イギリス、カナダなど多国籍でのIBD患者の実態を把握することを目的にしています。グッテの代表である宮﨑拓郎は、IBD患者が直面する課題を顕在化させることで、治療や支援の向上に役立てる狙いがあると述べています。
調査結果の特徴
診断までの時間
調査によると、発症から診断までにかかる時間には大きな地域差がありました。日本の回答者のうち、55.8%が「1年未満」で診断を受けたと答えたのに対し、海外対象国では32.5%に留まりました。また、発症から5年以上かかって診断を受けたという人は、日本が21.2%、海外対象国が25.2%という結果でした。このことは、アメリカやヨーロッパ諸国において、IBDに対する認識がまだ十分でないことを示唆しています。
医師や治療へのアクセス
信頼できる医師や適切な治療に辿り着くまでの時間についても、日本は48.1%が「1年未満」と回答していますが、海外ではその数字は20.5%にとどまりました。これは医療へのアクセスの差を反映している可能性があります。
学業や就労への影響
IBDが学業や就労にどのような影響を与えるかについては、特に興味深い結果が得られました。日本の回答者では57.7%が「何らかの影響があった」と述べており、海外対象国も62.8%という高い数字が示されています。就労への影響については日本で90.4%、海外でも86.9%の人々がそう回答しました。これにより、IBDが患者の日常生活に与える重大な影響が浮き彫りになりました。
診断の遅れの原因
自由記述の回答からは、患者自身及び医師のIBDに対する知識不足や症状の認識の難しさ、さらに専門医へのアクセスの困難さが診断遅延の原因として挙げられています。特に日本の患者からは、診断を受ける前に誤った診断をされていた事例が多く見受けられました。
今後の取り組み
グッテとGHLFは、今後も患者の声を広く社会に届けると共に、IBD患者が直面する課題の解決に向けた活動を続けていくとのことです。社会全体でこの病気への理解を深め、支援の輪を広げることが求められています。調査結果を元に、さらに具体的な支援策や情報提供がなされることに期待が寄せられています。
まとめ
この調査結果は、IBDという病気が患者の生活に及ぼす影響を理解し、より効果的な治療や支援を考えるきっかけとなるでしょう。今後も、国境を越えた連携が求められる中で、患者とその家族の生活の質を向上させるための努力が続いていくことが重要です。