救助者を支える新たな啓発資料
近年、心臓突然死の件数が日本国内で年間8万件を超え、そのうち約2万8,000件が一般市民による目撃のもとでの心停止とされています。この数は驚くべきものであり、心停止発生時に一般市民が行う救命処置は重要な役割を果たしていますが、その一方で実施する人々には強い心的ストレスがかかることが指摘されています。
NPO法人ちば救命・AED普及研究会(千葉PUSH)は、この心的ストレスに寄り添うための啓発資料『救助を手伝ってくれた方に寄り添うために』を新たに作成し、公開しました。この資料は、心的ストレスを抱える救助者を支えようとする指導者や周囲の人々を対象にしています。
心的ストレスの現実
心停止への救命処置は、災害時の支援と同様に多大な精神的な負担が伴います。実際、救助手続きに関わったことによる精神的不調を訴える人も少なくありません。しかし、これまでの救命講習会では、こうした心的ストレスに関する内容が十分に取り上げられることはまれであり、地方自治体によっては心理的なサポート体制が不十分である現状も見受けられます。
昨年、千葉PUSHは救命処置を実施する市民、つまりバイスタンダーにかかる心的ストレスとその対策をまとめた啓発資料を発表しました。この資料は、多くの反響を呼びましたが、同時に指導者向けの教育資料や、周囲の人々への啓発の必要性が明確になりました。
新たな啓発資料の内容
その結果、当会は、臨床心理士や救急救命士、精神科医、そして実際にバイスタンダーとして心的ストレスを経験された方々の協力を得て、改めて指導者や周囲の人々に向けた啓発資料を制作しました。資料には、バイスタンダーに起こりうる心的ストレスの具体的な内容やその対処法、さらには経験者のインタビュー、バイスタンダーとなった家族や友人がどのように支えられるかを紹介しています。また、救命講習会での実践的な指導ガイドも含まれています。
この資料は、千葉PUSHの公式サイトから無料でダウンロード可能です。ぜひ多くの人に活用していただきたいと願っています。資料の内容を広く知ってもらうことで、周囲が心的ストレスを抱える人を支えられる環境を整え、安定して救命処置に参加できるようにすることを目指しています。
プロジェクト背景
本資料は、令和7年度「キリン・福祉のちから開拓事業」の助成を得て実施されたプロジェクトの一部として作成されました。ここでの意義は、救命活動に従事する人々がより安心して活動できるよう、心理的なサポートの大切さに留意することです。彼らの支えがあってこそ、多くの命が救われることになるでしょう。
救助者としての経験は時に重荷となることもありますが、適切なサポートを受けることで、より多くの人々が自信を持って救助活動に取り組める環境が構築されることを期待しています。