エシカルパソコンの新未来
近年、企業の脱炭素経営がますます重要視されています。特に、製品のライフサイクルにおける温室効果ガス(GHG)排出量の把握は、持続可能なビジネスを構築する上で欠かせない要素となってきました。そんな中、日本GX総合研究所(以下、日本GX総研)とエシカルパソコン「ZERO PC」を展開するピープルポート社は、パソコン回収サービスにおけるGHG削減の貢献量を定量的に評価する新たな取り組みを開始しました。
協業の背景
この協業が生まれた背景には、環境問題への意識が高まっている中で、企業が製品の調達から製造、廃棄に至るまで、どのようにして環境負荷を減らすかという課題があります。特にIT機器の製造過程では、資源調達や部品生産に多くのエネルギーがかかり、その結果として排出されるGHGが問題視されています。これにより、企業がScope3での排出量を削減するための手段として、廃棄物のリサイクルや再利用が必要とされています。
さらに、2022年4月には東京証券取引所の上場基準として、CO₂排出量や削減目標の情報開示が義務化され、こうした環境情報の「見える化」に対するニーズが高まりました。このような背景を受け、両社は手を組むことを決意しました。
取り組みの詳細
この新たな協業において、日本GX総研は、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法を用いて、ピープルポートのパソコン回収サービスのGHG排出削減貢献量を算定する役割を担います。具体的には、産業廃棄物として処理した場合と、ピープルポートに回収を依頼した場合の比較を行い、その削減効果を明らかにします。この評価は国際基準(ISO 14040/14044)に基づいて行われ、客観性が確保されます。
この協業を通じて、算定されたGHG削減貢献量は、ピープルポートを介して回収サービスを導入した企業へ提供されます。これにより、ユーザー企業は自社のパソコン処分によるGHG削減効果を定量的に把握し、温室効果ガス排出インベントリやESGレポートなどで具体的に活用できるようになります。これまで見えにくかった、廃棄から再利用への切り替えによる削減効果が「見える化」されることで、企業は脱炭素経営の一環としてその成果を社内外に示しやすくなるでしょう。
今後の展望
日本GX総研とピープルポートは、このGHG削減効果の定量化を起点に、新しいGX支援スキームを構築することを目指しています。どこか特定の分野に留まらず、ZERO PCから他のIT機器や様々な製品・サービスへとLCA評価を拡大し、資源循環と脱炭素化の一体的な推進を目指す「GXプラットフォーム」の形成を視野に入れています。
さらに、環境価値としての削減貢献量をクレジット化し、企業間での取引やオフセット利用の可能性も考えています。個人の参加を促すために、日本カーボンクレジット取引所との連携も視野に入れ、資源循環への協力者を対象とした特典やキャンペーンを検討しています。
関係者のコメント
ピープルポート株式会社の代表取締役社長、青山明弘氏は次のように述べています。「当社は『環境負荷ゼロ・難民ゼロ』を理念に2017年よりZERO PC事業に取り組んでまいりました。日本GX総研様との協業により、これまで当社が続けてきた再生パソコンによるCO₂削減効果を信頼性の高いデータとして提示できることを大変嬉しく思います。お客様企業の脱炭素経営に寄与し、パソコンにおける『新品を買う以外の選択肢』を広げることで、サステナブルな社会の実現に貢献していきたいと考えております。」
また、日本GX総研の共同代表である鳥井要佑氏は、「資源循環によるGHG排出削減は、企業のGX推進において非常に重要です。ZERO PCは、パソコンを通じて“循環と削減”を示す素晴らしい取り組みで、協業によってその環境価値を定量的に示すことに大きな意義があります。」とコメントしています。
このような企業の取り組みは、持続可能な社会の構築への大きな一歩となるでしょう。今後の進展に期待が高まります。