慶應義塾大学と野村不動産の共同研究
昨今、居住空間の快適性と健康との関係が注目を集めています。慶應義塾大学と野村不動産株式会社は共同で、「高断熱集合住宅における床チャンバー方式の全館空調が住宅内の温熱環境および居住者の健康に与える影響」というテーマで研究を行い、その成果を発表しました。本研究は、床全体の空調システム『床快full空調』を採用している物件に転居した居住者を対象にしています。
研究の背景と目的
床空調システムは、従来の空調システムに比べて、室内環境を均一化しやすい特性があります。しかし、その健康への具体的な影響についてのデータは不足していました。そこで、本研究では、住居に転居した居住者の健康データを転居前後で分析し、温熱環境の変化が健康に及ぼす影響を科学的に示すことを目指しました。
研究の方法
本研究は2022年の夏から始まり、居住者の温熱環境をモニタリングするだけでなく、血圧や睡眠効率などのバイタルデータを実測しました。具体的には、夏季と冬季に分けて調査を行い、それぞれの時期における健康指標の変化を詳細に分析しました。
調査結果:夏季の健康効果
夏季の調査では、室温と湿度が低下したことで、居住者の『体のだるさ』や『イライラ』が軽減されたことが確認されました。特に、高温多湿の夏においては、床暖房による空調が心地よい環境を提供し、睡眠の質の改善にも寄与した可能性が高いとされています。
調査結果:冬季の健康効果
冬季の調査では、ひときわ重要な結果が得られました。床快full空調を利用することで、居住者の血圧が安定し、『手足の冷え』の自覚症状の頻度が改善されました。このことは、冬季における健康リスクを軽減する一助となるでしょう。
研究成果の発表
この研究成果は、多くの専門家に評価され、2024年には日本建築学会関東支部研究発表会、8月には日本建築学会大会において発表される予定です。また、2025年には空気調和・衛生工学会の論文集において査読論文としても採録されることが決定しています。
まとめ
慶應義塾大学と野村不動産が手掛けたこの共同研究は、床空調システムが居住者の健康に与える影響を具体的なデータを元に示した重要な試みです。今後も、このような研究が広がり、より快適で健康的な住環境の提供に寄与することを期待しています。