映画館で楽しむスマホ時代のショート映画体験とは
2025年12月22日、東京都のアップリンク吉祥寺で開催された「CONEXT THEATER」イベントでは、ショート映画配信サービス『SAMANSA』とクリエイター集団『こねこフィルム』が共鳴し、映像体験の新たな可能性を探る対談が行われました。この特別な夜には、SAMANSAの共同代表である遠山孝行氏と、こねこフィルムのプロデューサー三野博幸氏が登壇し、映画館ならではのアナログな体験を通じて、映像作品としての「情報」と「描写」について深く掘り下げました。
ショート映画配信サービス『SAMANSA』の概要
『SAMANSA』は、日本発のショート映画に特化した配信サービスで、厳選された500本以上のショート映画を提供しています。月額490円で視聴でき、30分以下で完結する作品を通じて、通勤や日常の隙間時間に映画体験を可能にします。世界中のクリエイターと直接契約し、他の国内VODでは楽しめない多様な作品を届けることを目指しています。
映画館への恩返し
イベントの初めに、三野氏はこのプロジェクトの意義を「映画館への恩返し」と表現しました。彼は同じ空間で映画を鑑賞することで生まれる、有形無形の体験がいかに特別なものであるかを強調し、SNSで得た影響力をリアルな場に還元したいと語りました。対する遠山氏も、日常的にスマホで視聴するショート映画が、映画館での鑑賞によって新たな価値を見出せると述べました。
情報と描写の違い
対談の中でも特に熱を帯びたのは、映像制作における「描写」の重要性についてでした。三野氏は「現代のショートドラマ市場では情報を詰め込みすぎている」と指摘し、表現が過度に説明的になっていることに警鐘を鳴らしました。彼は、字幕を隠してもストーリーが伝わるべきだとし、それがこねこフィルムの目指す映像表現であると強調しました。この考えに遠山氏も賛同し、短い尺の中でも言葉に頼ることなく感情を動かす映像の力を尊重しました。
AIレコメンドの影響
三野氏は、過去に偶然深夜テレビで出会った映画が自身に与えた影響を語りました。AIレコメンドによって自分の好みに合ったものばかりが提案される現代において、未知の作品との出会いが希薄になっていることに対する懸念を示しました。遠山氏も同様の懸念を表明し、SAMANSAとしては人的なキュレーションを重要視し、偶然性を楽しむ上映体験を提供したいと語りました。
ショート映画文化の未来
対談の締め括りとして、三野氏はアニメの成熟を引き合いに出し、ショート映画市場の今後の発展を論じました。彼は、ショートドラマやショート映画もアニメのように多様なジャンルが共存する文化へと成熟する必要があるとし、趣評が偏らない多様な作品を支持し続ける意味を述べました。遠山氏もこの意見に賛同し、SAMANSAが様々なジャンルの作品を配信する意義を再確認しました。
終わりに
本イベントは、デジタルとリアル、情報と描写、効率と情緒といった相反する概念を巡る対話を通じて、映像エンターテインメントの新たな地平を切り拓く両社の挑戦を示す貴重な場となりました。今後もこのような試みから、視聴者に新たな価値を提供することが期待されます。