サブテラヘルツ帯での新たな挑戦
京都大学大学院情報学研究科の研究チームが、最新の無線通信技術であるサブテラヘルツ帯(100 GHz帯)を用いた6Gに向けた広帯域移動伝送試験装置を開発しました。この技術により、交差点から約200メートルの範囲において、5Gの標準通信仕様に基づき、最大チャネル帯域幅を920MHzまで拡大することに成功しました。その結果、1.7 Gbit/sという高速な通信速度を実現し、車両向けの認識情報を効率的に伝送することが可能となります。
装置の意義と期待される効果
この成果は、特に交通社会の安全性向上に寄与することが期待されています。交差点における定点映像を迅速に伝送することで、交通の流れを円滑にし、事故を未然に防ぐための情報提供が可能になります。こうした超高速無線通信インフラの構築が進むことで、より安全な交通システムが実現するでしょう。
5Gの限界と新たな周波数の必要性
現在利用されている第5世代移動通信システム(5G)は、高速・大容量・低遅延・多接続性を特長とし、個人ユーザーだけでなく産業の基盤としても重要な役割を果たしています。しかし、5Gの通信規格においては、Sub-6 GHz帯と28GHz帯における周波数資源が将来的に逼迫することが懸念されています。こうした問題を解消するためには、新たな周波数資源の開発が不可欠です。
サブテラヘルツ波のメリットと課題
サブテラヘルツ帯(100–300 GHz)は、広帯域確保が可能であり、高精細映像の無線伝送を可能にします。しかし、この帯域は高直進性を有し、障害物による信号減衰の影響を受けやすいという課題があります。これを乗り越えるために、比較的見通しのよい車線上に特化して通信技術の研究が進められています。
新たな移動通信システムの研究開発
今回の開発では、従来の5Gに準拠した波形を用いることで、6G時代に向けた広帯域移動通信を実用的なレベルで実現しました。また、3GPP(3rd-Generation Partnership Project)による5Gの最大帯域幅を超える取り組みとして、直交周波数多元接続方式(OFDMA)の周波数帯域幅を拡張する提案も進行中です。この動きは、サブテラヘルツ帯における受信機の実装にも寄与するでしょう。
今後の展望
今回開発した広帯域移動伝送試験装置の検証結果からは、移動受信機に対し、送信ビームを正確に追従させなくても、受信機が機能することが証明されました。このことは、200メートル以上の距離においても安定した通信が可能であることを示しています。
この成果は、交通の安全性向上に向けた重要な一歩となり、今後のサブテラヘルツ波を利用した通信システムの構築にも大きな影響を与えることが期待されます。産業界においても、このデータが活用され、安全な通信インフラの構築に寄与することが求められます。
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