インバウンド市場の持続可能性に向けた新しい視点
EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)は、日本の観光業界の未来を見据えた重要なレポートを発表しました。この分析は、日本政府が目指す「リピーター4,000万人時代」におけるインバウンド市場の動向に焦点を当てており、特に地方の消費動向やリピート化の重要性に言及しています。このレポートは、観光庁の「インバウンド消費動向調査」のデータをもとに、徹底した市場分析を行っています。
1. 韓国や台湾に見る成熟市場と中国の特異性
インバウンド市場では、韓国や台湾、香港などの成熟市場が存在しています。具体的には、初回訪問者は韓国が約16%、台湾が12%、香港が10%未満とされているのに対し、中国の初回訪問者は4割に達しています。このような違いは、リピーターを増加させるための戦略に大きな影響を与えます。特に中国市場では、新規訪問者を対象としたターゲティングが必要です。
訪問回数別のデータ分析によれば、全体では約35%が初回訪問者であり、中長期的にはリピーター率が65%に達する見込みです。このリピート化を促進させることで、4,000万人のリピーター獲得が現実味を帯びてきます。
2. 円安がもたらす消費実態
消費額の増加には円安の影響が色濃く反映されています。具体的には、2025年の平均為替レートが約150円となった場合、9,454億円の影響が生じる素地があるとEYSCは述べています。初回訪問者ほど宿泊日数や消費額が高い傾向にあり、これを踏まえた上で、為替相場に基づく正確な消費評価が求められます。
3. 地域型観光の課題と展望
地方部(三大都市圏以外)では、インバウンド消費が2.0兆円(全体の24.8%)にとどまっており、三大都市圏との一人当たり消費単価に差が見えています。この差を解消するためには「いかに宿泊してもらうか」が鍵とされています。宿泊数が消費金額と直結しているため、地方の魅力を高め、その滞在を促進させる施策が必要です。
地方への消費マインドを向上させるには、オーバーツーリズムの問題も考慮しつつ、地域支援を行い、住民の生活向上に繋がる観光地マネジメントを強化することが不可欠です。地域ならではの魅力を発信することで、消費を促進する仕掛けを構築することが重要になります。
4. インバウンド市場の未来に向けて
今後、インバウンド市場の拡大を図るには、消費者の行動特性を捉え、地域ごとのターゲットを明確にする必要があります。一方で、リピーターとの接点を増やし、地域特有の体験を提供することがポイントです。消費のトレンドが商品から体験へとシフトする中で、観光業界には柔軟な戦略が求められます。
EYSCの平林知高氏は、「インバウンド市場は多様化しているため、ターゲットを明確にし、適切なマーケティングを行うことが求められる」と述べています。この視点から新たな市場戦略を見出すことが、持続可能な観光業の確立に向けた重要なステップとなるでしょう。
レポートの詳細については、EYの公式ウェブサイトからダウンロードできます。