洋上風力と漁業の未来共創に向けた新たな提案
2024年5月12日、株式会社三菱総合研究所(以下、MRI)は、洋上風力のポテンシャル海域についての研究レポート「日本の洋上風力ポテンシャル海域(第2版)」を発表しました。このレポートは、前回発表された第1版を基に、環境や社会条件を考慮して新たなポテンシャル海域の分析を行い、漁業データを組み合わせたポテンシャルマップを提供しています。
洋上風力の重要性
近年、地球温暖化対策として、温室効果ガスの排出を2050年までにネットゼロにすることが求められています。洋上風力発電は、この目標に向けた重要な電力供給源の一つであり、エネルギー安全保障や経済成長の観点からも必須とされています。特に日本では、洋上風力の導入を進める上で、漁業との共生が不可欠な課題となっています。MRIは、これら2つの産業の共生を実現するために、ポテンシャル海域に関する分析を進めてきました。
研究の背景と目的
第2版のレポートは、自然条件や社会条件を考慮し、ポテンシャル海域を再分析しています。新たに海底傾斜データを追加し、船舶航行に関するデータを更新しました。これにより、漁業への影響を軽減しつつ、洋上風力の導入を促進するための具体的な戦略を示すことを目的としています。
主要な分析結果
1.
ポテンシャル海域の広がり
着床式のポテンシャル海域面積は62GW、浮体式は2,347GWと推計され、前回の分析結果とほぼ同様の規模です。水深と離岸距離を考慮した詳細な分析も行われました。特に、浮体式のポテンシャルは、500m未満が837GW、500m以上が1,509GWと報告されています。
2.
漁業データとの関連性
浮体式ポテンシャル海域と沖合底びき網漁獲統計データを比較したところ、いくつかの利用海域が重複していることが確認されました。このことから、国主導で漁業に関するデータを集約し、共有する必要性を強く提唱しています。
今後への期待
MRIは、今後も関係者との対話を深め、このレポートを洋上風力と漁業の共生実現に向けた議論のスタート地点として役立ててもらうことを目的としています。様々なステークホルダーが参加し、意見交換を行うことで、両産業の発展を促し、国のエネルギー戦略に寄与できることを期待しています。
まとめ
本レポートは、洋上風力発電の導入と漁業の持続可能な発展が両立できる道筋を示す重要な指針です。温暖化対応としての洋上風力の重要性とともに、漁業との調和をどのように実現するのか、今後の議論に注目が集まるところです。MRIは、さらなるデータ分析と対話を通じて、持続可能な未来を築くための活動を続けていきます。