幸福の哲学「ラーゴム」が描く社会像
2025年7月2日、株式会社新評論から新たな書籍「ラーゴムが描く社会―スウェーデンの『ちょうどよい』国づくり」が発刊されます。本書は、スウェーデンで広く受け入れられている「ラーゴム」と呼ばれる概念に焦点を当て、この哲学がどのように同国の政治や経済、社会に根付いているのかを探求した内容です。
ラーゴムとは何か
「ラーゴム」は、自己と他者を大切にしつつ、求めすぎないことを美徳とする考え方です。この言葉はスウェーデン文化の基盤となっており、「ちょうどよい」という意味を持つ、この理念は、個々のライフスタイルや地域社会のあり方に深く影響しています。著者の鈴木賢志氏は、この「ラーゴム」の精神が、実際にはスウェーデンの社会システムの形成に大きな役割を果たしていると指摘しています。
スウェーデンの幸福度ランキング
スウェーデンは国際的な幸福度ランキングで常に上位に位置しています。特に「高福祉高負担」の現状はアメリカとは対照的であり、その経済的豊かさはアメリカを凌ぐとも言われています。このような背景には、「ラーゴム」があるのではないかと鈴木氏は考察しています。多くの国では、「高福祉高負担」が勤労意欲を阻害すると考えられがちですが、スウェーデンでは逆に人々の幸福感を高める要因として機能しているのです。
分断の時代に抗うラーゴムの道
現在、分断や対立を生む政治手法は広がりを見せています。しかし、スウェーデンの「ラーゴム」は、そうした流れに対する有力なアンチテーゼとなる可能性があります。本書では、ラーゴムを基にした国家像が、特に現代の社会において私たちに何を示唆するのかも掘り下げていきます。
本書の構成
本書は「ラーゴム」の各側面を綜合的に理解するための手引きとなっており、以下の章立てで構成されています。
1. ラーゴム(LAGOM)とは何か
2. 政治におけるラーゴム
3. 経済システムにおけるラーゴム
4. ビジネスにおけるラーゴム
5. ラーゴムな全員参画型社会の形成
6. 環境問題とラーゴム
7. 外交とラーゴム
8. ラーゴムの国はなぜ幸せなのか――分断が蝕む現代世界のアンチテーゼ
終わりに
本書は、スウェーデンや北欧社会への関心がある人々が、各専門領域を探索する前に、この国の全体像を理解するのに適したテキストとなっています。著者の鈴木氏は明治大学の教授であり、スウェーデン社会研究所の代表理事でもあります。彼は実際にスウェーデンでの長い経験を通じて、日スウェーデンの社会システムを比較研究してきました。
書籍の出版は、単に学問的な研究を超えて、国際的な視野で日本社会における「ラーゴム」の意義を考える良い機会となること目指しています。スウェーデンの「ちょうどよい」国づくりから、私たちが何を学び、どのように未来を描くことができるのか、一緒に考えてみましょう。