日本企業の好業績と賃金低迷の謎を解く
日本企業は現在、高い業績を誇っていますが、実際のところ、実質賃金は過去30年間にわたり低迷しています。なぜ企業が利益を上げているにもかかわらず、多くの人々がその恩恵を感じられないのでしょうか?これは、相川清氏の著書『なぜ会社は儲かっても人を豊かにできないのか』で詳しく解説されています。
企業の利益配分に潜む課題
本書は、財務省の法人企業統計調査などを基に、日本企業の利益配分が根本的に変化している現状を指摘しています。売上高がほぼ横ばいで推移する中、経常利益は大幅に増加しているものの、実質賃金や設備投資には十分に配分されず、むしろ株主への配当金は約10倍に増加しています。この構造が、企業が生み出す利益が働く人々に還元されず、企業の成長が人々の豊かさに繋がっていない理由だとされています。
相川氏は、このような「分配のねじれ」を一枚のグラフで示しており、その結果は明らかです。利益は株主に優先的に配分され、設備投資や従業員への給与には回らない現実が浮かび上がります。
企業の現状を数字で示す
「企業業績は良い」とされる一方で、「自分の生活は豊かにならない」と感じるのは、多くの国民が抱く違和感です。本書はその理由を、企業利益や配当、賃金、設備投資などを一つの構造として捉え直すことで、視覚的に理解できる形で説明しています。
また、本書ではROE(自己資本利益率)重視の経営が、どのように人件費抑制や設備投資削減を促し、短期的な利益ばかりを追求する構造へと繋がっているのかを検証しています。数字上の効率性ばかりを求める一方で、企業は長期的な成長力や人材への投資を失ってしまうという問題提起がなされています。
日本型資本主義の再構築を提言
著者は、なぜ企業の利益増加が賃金や国内投資に繋がらないのかを明らかにし、利益を人材育成や賃金、設備投資に循環させるための具体策を提案しています。また、株主利益の最大化を追求する経営から脱却し、企業の持続的成長と社会全体の豊かさを両立させる新しい日本型資本主義の未来についても触れています。
著者の相川氏は、現状分析を超えた提言を行っており、日本の経済に関する構造的な問題を掘り下げることで、未来の変革の可能性を示唆しています。彼は「分配のかたちは制度や政策によって変えられるものであり、その問い直しが未来を変える力になる」と述べています。
書籍詳細
今回紹介する書籍は、2026年6月23日に方丈社から発売される『なぜ会社は儲かっても人を豊かにできないのか ROE偏重による分配・企業統治の歪みを可視化する』です。288ページのオールカラーで、定価は2,420円(税込)です。相川清氏の豊富な知識と経験から生まれた本書は、企業経営を考える上での新たな視座を提供してくれることでしょう。興味のある方は、ぜひ手に取ってみてください。