立命館大学発のスタートアップ "IntraPhoton" 設立の背景
2023年、立命館大学発の新たなスタートアップ、株式会社IntraPhotonが設立されました。この会社は、立命館大学の藤原康文教授と、大阪大学名誉教授である彼の研究成果を活用し、次世代のマイクロLEDディスプレイの実用化を目指しています。本社は立命館大学びわこ・くさつキャンパス内のグラスルーツイノベーションセンターにあり、ここが彼らの活動の拠点となります。
このスタートアップの設立には、国立研究開発法人である科学技術振興機構(JST)が支援する「ディープテック・スタートアップ国際展開プログラム(D-Global)」が重要な役割を果たしました。さらに、東京大学と立命館大学からの助成金も受けており、研究成果を実社会に実装するための強力な後押しとなっています。
進化が求められるVR/ARディスプレイ
最近、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術の進化が著しく、それに伴い、全く新しい体験が求められています。特に、現実と見分けがつかないような没入感を提供するためには、高解像度のディスプレイが必要です。具体的には、人間の網膜が認識できる約60 PPD(Pixels Per Degree)に対応する精度が求められ、このレベルを達成するためには各色のLEDを1μm角まで微細化し、さらに高精度に配置する必要があります。
しかし、このような技術的な挑戦にはさまざまなハードルがあります。従来型の赤色LEDは、10μm以下に小型化すると、発光効率が著しく下がってしまうため、マイクロLEDディスプレイの実用化には大きな壁となっています。
希土類添加GaN LEDの基幹技術
IntraPhoton社が持つ強みは、藤原教授が世界で初めて確立した希土類添加GaN(ガリウムナイトライド)赤色LED技術にあります。この技術は、微量のユーロピウム(Eu)を添加することで、LEDの微細化が進んでも発光効率が低下しない特性を持っています。さらに、青色および緑色LEDを同一基板上で三層積層することにも成功し、フルカラー表示を可能にしました。
これにより、LEDを1μm角に微細化した際も、個別のLEDチップを並べる作業が不必要であり、高精度なパネルの直接製作が可能になります。この技術革新により、製造歩留まりやコストの改善が期待され、発光スペクトルも非常にシャープで安定しています。
未来に向けたIntraPhoton社のビジョン
IntraPhoton社は、希土類添加GaNマイクロLEDの製造・販売を通じて、リアル感あふれるVR/ARデバイスの実現を目指しています。今後は、JSTのさらなる支援を受けながら、Proof of Concept(PoC)の達成やプロトタイプの開発を加速させるとともに、国内外企業とのコラボレーションを強化し、生成AIとの融合も視野に入れた様々な応用を模索しています。
創業メンバーの紹介
IntraPhoton社の CEO 兼 Co-Founder は、本蔵俊彦氏です。東京大学理学部を卒業し、米国コロンビア大学でMBAを取得。その後、マッキンゼーや産業革新機構といった大手企業を経て、数多くのスタートアップ設立を手掛けてきました。
一方、CTO 兼 Co-Founder の藤原康文教授は立命館大学の教授であり、希土類添加半導体の分野で新たな研究を開拓しています。彼の研究は、AppleやSamsungといった世界的企業からも注目されています。
会社情報
新たに設立されたIntraPhoton社は、ディープテックの世界で輝く未来を切り開く期待が寄せられています。彼らの新技術がもたらす変化と進化に注目です。