2025年全国児童養護施設退所者調査の報告書が発表
11月は「児童虐待防止推進月間」です。この時期に、全国児童養護施設の退所者に関する重要な報告書が明らかになりました。この調査は、2020年から始まった10年計画の一環として実施されており、全国の児童養護施設における退所者の状況や課題に光を当てています。
調査の概要
今回の調査は、全国47都道府県の577の児童養護施設を対象に行われました。新たに136の施設からアンケートが回収され、合計3,445人分の回答を得ることができました。特に注目されたのは、2024年4月から導入される「児童自立生活援助事業」の適用範囲の拡大や、退所者の進路選択、高校卒業後の住まいなどについての詳細な調査結果です。
報告書は90ページにわたっており、様々な側面からの分析がなされています。特に「ライフストーリーワーク」と呼ばれる生い立ちの整理について、どのように実施されているのか、またその有効性についての調査も行われました。
アンケートから見えてきた現実
調査結果において目を引くのは、アフターケアの担当職員が不在であるという事実です。約1割の施設では、退所者に対するアフターケアが十分に行われていないことが分かりました。多くの施設では寄付品の仲介を行っているものの、現金の給付に頼るケースは少なく、経済的な支援が不足しているのが実情です。
また、新制度の「児童自立生活援助事業」の導入は、まだ3割程度に留まっていることが示されています。これに対して、措置延長を受けた退所者は増加しており、大学進学を選択する者も67.1%に達しています。この数字からも、教育や就業の選択肢がやや拡大していることが伺えます。
支援の課題と今後の展望
一方で、高校卒業後の進路において中退や休学が増加しており、主な理由として学習意欲の低下が挙げられています。特に、早期に退所した若者の高校中退率は47.7%と高く、これは一般的な退所者の1.6%という数字と比較すると、非常に大きな差があります。このギャップは、支援体制が不十分であることを示唆しています。
また、調査における「生い立ちの整理」の実施状況には、施設ごとのばらつきがあることが確認されています。支援を必要としている子どもたちに対して、よりきめ細やかな対応が求められています。
まとめ
2025年の調査報告書は、全国児童養護施設の退所者が直面する現実と課題を明らかにしています。これを受けて、さらなる支援の強化が求められる中、より多くの子どもたちが自立に向けて前向きに生きていける社会を目指す必要があります。児童養護施設の役割はますます重要になってきています。
今後も、実施者である特定非営利活動法人ブリッジフォースマイルは、調査結果をもとに、具体的な支援策の検討を続けていく所存です。