低騒音で安全な鉄筋ケレン技術「LSR工法」
東京都千代田区に位置する日本大学、東京都港区の飛島建設株式会社、京都府京都市の株式会社光響、そして京都府久世郡のPCL株式会社が共同開発した鉄筋ケレン技術「Laser Surface Refine工法(LSR工法)」は、鉄筋コンクリート構造物の断面修復工事において新たな成果を挙げています。この工法は、特に鉄道高架橋の補修工事において、高い安全性を確保しつつ、周辺環境や作業環境への配慮がなされている点が大きな特徴です。
1. 研究開発の背景
国内における社会基盤施設の老朽化が深刻な課題となる中で、劣化した構造物へ適切に対応する手段が求められています。鉄筋コンクリートの維持管理においては、断面修復工事が重要な役割を果たすものの、市街地での施工は騒音や粉じんの発生が問題となり、施工が難しい場合もあります。従来の電動工具では騒音レベルが用地境界の規制を超えることがあり、実施が困難になるケースが増えていました。
このような背景から、今後の環境問題への対応や安心・安全な工事方法の確立を目指し、日本大学と飛島建設、光響、PCLの4社が協力し、LSR工法の開発に至ったのです。
2. LSR工法の概要
LSR工法は、鉄筋の腐食によるひび割れや浮きが生じたコンクリート構造物に対し、劣化部分を除去して修復する新しい手法です。具体的には、腐食した鉄筋の錆を取り除き、その後防錆剤を塗布する流れになります。従来工法で用いられる電動工具を使う際には、施工箇所を防音シートで覆うことが求められますが、この作業には限界がありました。しかし、LSR工法では、レーザーを利用して塗膜や錆を除去し、騒音や粉じんの発生を大幅に抑制することができます。
特徴
- - 騒音・粉じんの低減: 従来のジェットタガネ工法に比べ、騒音は26%、粉じんは53%低減。
- - 特殊技能不要: 最終的な仕上がりは従来技術と同等。
- - 軽量化: 機材が軽量で、高所作業が容易。
- - 裏側施工も可能: 特別な装置を装着することで、鉄筋の裏面の施工も実施可能。
3. 現場適用事例
鉄道高架橋の補修工事での活用事例としては、床版張り出し部での施工が挙げられます。この場合、LSR工法によるケレン作業後にカップブラシを用いて仕上げを行った結果、従来工法に匹敵する仕上がりを実現しました。作業速度はLSR工法が3時間/m²に対し、従来工法が2時間/m²となり、仕上がりには若干の時間を要しましたが、今後は自動化による生産性向上も視野に入れています。
4. 今後の展望
LSR工法は、特に市街地での鉄筋コンクリート構造物の修復工事において、環境への配慮が求められる今の時代において非常に有用な技術です。今後も日本大学、飛島建設、光響、PCLの4社は、この工法のさらなる改良と普及を進め、全ての鉄筋コンクリート構造物の維持管理に貢献していく方針です。この取り組みが、持続可能な社会の実現に寄与することが期待されています。