ビタミンCが肌に与える新たな影響：エピジェネティクスの視点から

ビタミンCの新たな役割を探る研究

ロート製薬株式会社は、ビタミンC（L-アスコルビン酸）の新しい機能についての重要な研究成果を発表しました。この研究では、ビタミンCが皮膚の表皮細胞の増殖を促進し、さらにはそのメカニズムとしてDNAの脱メチル化を介在させることを示しています。

共同研究者には、東京都健康長寿医療センターの石神昭人副所長や、東洋大学准教授の佐藤綾美研究員、北陸大学薬学部の佐藤安訓准教授が名を連ねています。この成果は、2025年4月20日に権威ある米国科学誌『Journal of Investigative Dermatology』に掲載される予定です。

研究成果の概要

この研究のポイントは以下の通りです。まず、ビタミンCが表皮角化細胞の増殖を促進する役割を果たすことが確認されました。また、その過程には、細胞増殖に関わる遺伝子のDNA脱メチル化が関与していることが発見されました。これによって、ビタミンCが肌の老化に対抗する新たな介入法になる可能性が示唆されています。

エピジェネティクスとは何か

エピジェネティクスとは、DNAの配列を変えずに、どの遺伝子が働くかを調整するメカニズムです。この仕組みは、細胞が自らの性質を維持したり、環境に応じて応答したりする際に重要です。最近の研究からは、老化や疾患にも深い関連性があることが明らかになっています。

ビタミンCのこれまでの知見

ビタミンCは広く知られる抗酸化物質であり、コラーゲン合成を促進する効果や紫外線によるダメージ軽減にも寄与します。特に表皮においては、紫外線や環境ストレスから細胞を保護する役割を果たしています。

研究の背景

本研究では、ヒト三次元培養表皮モデルを使用し、ビタミンCが表皮角化細胞に与える影響を解析しました。その結果、ビタミンCが含まれると、表皮の厚みや細胞の増殖が促進され、DNAの脱メチル化の指標である5-ヒドロキシメチルシトシン（5-hmC）が増加することが確認されました。このメカニズムには、DNA脱メチル化酵素（TET）が深く関与していることがわかりました。

新たな視点での考察

ビタミンCがTET酵素を介してDNA脱メチル化を促進し、その結果として表皮細胞の構造が厚くなる可能性が示唆されます。また、増殖に関連する遺伝子の発現も促進されることから、エピジェネティクスの観点からもビタミンCの新しい役割が強調されます。

社会への影響と今後の展望

この研究は、ビタミンCがエピジェネティクスにより皮膚に与える影響を系統的に示しており、加齢とともに細胞機能が低下することを改善する手法として新たに注目されています。ビタミンCによるエピジェネティック制御の応用は、臨床的なスキンケア戦略や生活の質の向上に寄与すると期待されています。今後の研究と開発は、心身ともに健康で豊かな社会を実現するための重要な鍵を握るでしょう。