荏原製作所の新たな挑戦 - 「EBARA-D3」
近年、日本の製造業は熟練人材の減少や技能伝承の困難という深刻な課題に直面しています。荏原製作所は、この課題に立ち向かうべく新たな製造DXプロジェクト「EBARA-D3」を立ち上げました。このプロジェクトは、ゲーミフィケーション技術を駆使して、製造現場における知識や技術、哲学を次世代へと引き継ぐことを目的としています。
EBARA-D3の成り立ち
「EBARA-D3」の「D」はデジタルトリプレットを指し、知識、技(技能・技術)、哲学の3つを3D空間上で再現するという意味です。この内容は既に藤沢工場で試験導入されており、今後他社との共同開発を通じて社会実装を進める計画があるとのこと。
製造現場では、依然として熟練者の経験や勘が重視されることが多く、技能の共有は困難を伴います。「EBARA-D3」は、こうした問題を解決するために、単に設備や工程をデジタル化するだけでなく、作業者の判断や感覚といった暗黙知も3D空間に再現します。これにより、誰でも簡単に理解できる体験を提供し、技能の平準化と定着を促進します。
EBARA-D3を構成する要素
「EBARA-D3」は、2つの主要なプラットフォームから成り立っています。まず1つ目が「Beyondverse」(ビヨンドバース)で、これは荏原独自のナレッジデータ基盤です。工場内のモノや人を効果的にデジタル化し、メタバース上で様々な検証やシミュレーションが実施されます。最新のゲームエンジンを利用することで、設備や作業者の動きを3Dデータとしてリアルタイムに再現できる仕組みです。
2つ目は、「DOJO」(ドウジョー)と呼ばれる技能伝承・教育体系システムです。この独自のシステムは、個々のスキルを可視化して定量的な評価を行い、それに基づいた教育メニューの作成を可能にします。熟練者の動きを記録し、その技術や判断基準を映像やVR教材として分解して提供することで、学びやすさを実現します。
今後の展望
試験導入を進めた藤沢工場の成果を受けて、今後は他の事業所へもEBARA-D3を導入していく予定です。このプロジェクトは技能伝承の問題を解決するだけでなく、従業員の成長も促進し、企業全体の人的資本経営に寄与することが期待されています。
また、様々な課題を抱える企業との連携を強化し、この取り組みを日本の製造業全体に拡大させることを目指しています。さらに、EBARA-D3の外販やSaaS提供も視野に入れており、製造業界全体の進化に貢献していくことでしょう。
結論
荏原製作所の「EBARA-D3」は、最新技術を活用して製造業の未来を切り拓こうとする大胆な試みです。ゲーミフィケーション技術を駆使したこのプロジェクトは、全体で技能を育て、継承していくという新しい形の製造DXを実現しようとしています。これからの展開に期待がかかります。