第一三共ヘルスケアの革新研究
第一三共ヘルスケア株式会社は、最近行った研究で皮膚細胞の老化が慢性炎症を引き起こし、それが肌表面の細かい凹凸に影響を与えることを発表しました。これらの成果は、2023年6月に開催された日本抗加齢医学会総会で披露され、エイジングケア製品の開発に大きく寄与することが期待されています。
研究の背景
加齢により、肌表面に細かい凹凸が見られるようになります。この凹凸は肌のくすみや年齢を感じさせる要因の一つと考えられています。本研究では、老化によって引き起こされる慢性炎症が肌表面にどのように影響するかを検討しました。特に、真皮に存在する線維芽細胞がどのように炎症を引き起こし、その結果として肌に与える影響について焦点を当てています。
近年、線維芽細胞が分泌する炎症性サイトカインの影響で、周囲の正常な細胞にも悪影響が及ぶことが知られてきました。これを「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)」と呼び、老化に関連する研究では無視できない要素となっています。こちらの研究では、真皮の線維芽細胞が加齢に伴いどのように変化し、それが肌表面の状態にどのように関連するかを探りました。
研究方法と成果
研究チームは、老化した線維芽細胞が正常な表皮細胞に与える影響を調査するため、共培養の実験を実施。老化させた線維芽細胞と若い線維芽細胞を組み合わせ、細胞の相互作用を観察しました。結果、老化モデルの線維芽細胞が培養された表皮細胞は、明らかに厚みが増し、表面の凹凸が大きくなることが確認されました。これは、肌の見た目に直接的な影響を及ぼすことを意味しています。
さらに、老化した線維芽細胞では、表皮細胞の成熟と関係する因子であるファイラグリン(FLG)や、角層の成熟に寄与する酵素の発現が増加することも確認されました。これにより、肌表面の凹凸が増すメカニズムが一部解明されつつあります。
慢性炎症とSASP因子の影響
研究では、老化した線維芽細胞から分泌されるSASP因子が肌に与える影響も考察されました。具体的には、TNFαやIL-6といった炎症性サイトカインの中和抗体を用いることで、老化細胞が周りの細胞に及ぼす影響を評価しました。その結果、これらの因子の抑制が表皮の遺伝子発現にポジティブな変化をもたらすことが明らかとなりました。このことから、老化線維芽細胞からのSASP因子は表皮の健康において重要な役割を果たす可能性が示唆されました。
今後の展望
研究成果に基づき、第一三共ヘルスケアは、老化による皮膚のトラブルを解消するための新しいソリューションを提供することを目指しています。細胞老化を遅らせ、慢性炎症を抑えることができれば、肌表面の凹凸を減少させ、若々しい印象を保つことに寄与するでしょう。
この研究がもたらすエイジングケア製品の開発は、消費者にとっても大きな期待を寄せられています。第一三共ヘルスケアは、今後も皮膚の健康に関する研究を進めることで、より良い生活の質(QOL)の向上を図ります。