新しい消費スタイルを創出する「買い物カゴ投票」
2024年に発表された「買い物カゴ投票」は、スーパーマーケットなどでの消費者の声を反映するための革新的な取り組みとして注目されています。これを考案したのは公益財団法人WWFジャパンで、2024年には公立大学法人滋賀県立大学と共同で実証実験も行われました。そして、2025年度のグッドデザイン賞を受賞したことも大きな話題となっています。
この投票システムは、スーパーマーケットを訪れる消費者が、二者択一の質問に対して「YES」または「NO」のかご置き場に買い物かごを返却することで意思表示ができる仕組みです。これにより、消費者が自分の意見を簡単に表明し、その結果を小売店が反映させるという新しい形のナッジ型コミュニケーションを実現しました。
実証実験の結果
実証実験は2024年10月から都内のスーパーマーケットで行われ、その結果はWWFジャパンのウェブサイトで発表されました。特に注目すべきは、報酬なしでも約30%の来店者が自発的に投票に参加したことです。この実験においては、買い物客の約7割が「畜産品のノントレー販売」に賛成し、その後売り場でノントレー商品のラインアップが増えた結果、売上比率が介入前の1.42倍に達しました。このように、消費者の意見が実際の購買行動に反映される良い結果が得られました。
楽しく参加できる仕組み
「買い物カゴ投票」は、行動科学の「FEASTフレームワーク(Fun, Easy, Attractive, Social, Timely)」を活用して設計されています。これにより、買い物中に自然と参加したくなる体験を提供していると競争されています。投票に参加することで、顧客はよりポジティブな変化を店舗に感じることができるため、企業と顧客のサステナブルな関係が築かれることが期待されています。
一方で、消費全般における意識変化はすぐには見られなかったものの、このような投票体験を継続することで、社会参画意識や自己効力感が醸成され、長期的には消費者意識の変化が期待されます。
グッドデザイン賞の受賞
「買い物カゴ投票」は、そのユニークさと効果により、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。受賞理由としては、「小さな選択の積み重ねが大きな変化を生むことを視覚的に示し、楽しみながらの行動を促している」点が評価されました。この受賞は、WWFジャパンと滋賀県立大学、The Breakthrough Company GOの三者によるもので、この取り組みが社会に与える影響を再確認するきっかけともなっています。
導入の容易さ
「買い物カゴ投票」は、特別な設備やシステムを必要とせず、どの店舗でも導入可能です。導入を希望する店舗には、マニュアルやツールなどがすべてウェブ上で公開されており、誰でもすぐに取り入れられます。この取り組みにより、持続可能な消費を促進する新しいコミュニケーションの形が広がることが期待されています。
効果的なサステナブルな消費への道
WWFジャパンの増本香織氏は、気候変動と生物多様性の回復を目指す中で、サステナブルな消費の促進が不可欠であると強調します。「買い物カゴ投票」は、単なる消費行動から持続可能な選択を促すための重要な手段であり、消費者と店舗が共に新しい価値を創造する機会となります。これからも多くの店舗での採用が進むことが期待されます。
結論
「買い物カゴ投票」は、消費者が積極的に声を上げることで、持続的な未来をつくる一助となる新しい仕組みです。今後、全国の店舗で広がることによって、より多くの消費者が参加し、社会的な意識変化が促進されることを願っています。