医療現場における業務効率化の新たな一歩
三重県津市にある医療法人永井病院は、医療DXプロジェクト「NAGAI 100」を始動し、AIヘルプデスク「Helpfeel」を導入しました。この取り組みは、少子高齢化と新型コロナウイルス感染症の影響が重なり、救急搬送件数が増加する中で、医療現場の業務効率化と職員の定着率向上を狙ったものです。
背景と導入の目的
永井病院の年間受入数は約3,000件に達し、職員の数も500名を超えて増加しています。急激に増加する業務量に対して、従来の労務管理や新人教育の方法はもはや持続不可能となっていました。そこで、業務効率化が最も重要な経営課題として浮上してきたのです。そこで始まったのが「NAGAI 100」プロジェクトで、AIヘルプデスク導入により、「先輩や同僚に質問しにくい」という心理的不安を解消することを狙っています。
AIヘルプデスクの導入
HelpfeelのAIヘルプデスクは、職員が業務知識や制度情報をスマートフォンから即座に検索できる環境を提供します。この結果、導入からわずか1年で離職率が2.7%改善され、職員の質問対応が減ったことで人事部門の年間残業時間も約60時間削減されるという成果が上がりました。
取り組み内容
具体的には、就業規則や看護手順、感染症ガイドラインなどを可視化し、職員が必要な情報を迅速に得られるようにしました。最初は利用が伸び悩みましたが、アンケートを基に需要の高い情報を追加した結果、徐々に利用率が上昇しました。また、オリジナルキャラクター「ふぃーるごりら」を活用した周知施策も評価されています。このユニークなアプローチにより、職員の87%がHelpfeelを知っており、そのうち75%が「使いやすい」と評価するまでに至りました。
導入の効果
このAIヘルプデスクの導入がもたらした最大のメリットは、新人職員の心理的不安を軽減し、離職率を改善したことです。また、現在の看護業務では職員が自信を持って患者対応ができるようになり、その結果、看護サービスの質も向上しています。病院の人事部門においては、業務の効率化により大幅な残業削減を実現しました。
今後の展望
永井病院は、Helpfeelの導入によって得られた時間を「患者やその家族に寄り添う時間」に充てることで、医療の質向上を目指しています。院長の星野康三氏も、「業務をもっと楽にできる意識が職員に芽生え、自ら改善を考える文化が形成されています。この意識変革が医療DXプロジェクト「NAGAI 100」の推進力となるでしょう」と語っています。今後も適切なデジタルツールを活用し、より効果的な医療サービスを実現していくことを目指しています。
まとめ
医療現場における業務効率化は、特に今のような少子高齢化の時代には避けて通れない課題です。永井病院の事例は、AIテクノロジーを利用した効率化がどのように医療の質を向上させ、職員の定着率を高めるかの一つの成功モデルです。これからの医療現場において、どのようにデジタル化が進んでいくのか、その動向が注目されます。