日本のTGM Grand Prix、世界自律走行レースで栄華を手に入れる

2023年11月15日、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された自律走行レース「A2RL（Abu Dhabi Autonomous Racing League）」の『Silver Race』で、日本の自動車レーシングチームTGM Grand Prix（TGMGP）が見事に優勝を果たしました。世界中の研究機関や大学が参加する中でのこの勝利は、TGMGPにとって歴史的な成果であり、日本の技術力が国際的に認められる瞬間となりました。

A2RLとは？

A2RLは、2024年に発足した世界最大の自律走行レースシリーズです。各チームは、主催のASPIRE社から提供される共通ソフトウェアを元に独自の自律走行アルゴリズムやAI制御技術を組み込み、その技術力を競争します。目的は「未来の自動運転技術の向上」にあり、過酷なレース環境で実際の技術革新を促進することを意図しています。

使用される車両は、国内最高峰の「SUPER FORMULA」にも使われているダラーラ社製の「SF23」で、最高速度は300km/hを超えます。

このA2RLに参戦するのは、マサチューセッツ工科大学や北京理工大学、ミュンヘン工科大学といった世界的に名高い大学を含む11のチームです。その中で日本から唯一TGMGPが、レーシングチームとして自律走行の世界に挑戦しているという点が特筆すべき点です。シーズン2の今年は、多くの観客が訪れ、225万ドルの賞金を巡る争いが繰り広げられました。

Silver Raceの勝利が意味するもの

Silver Raceは、技術試験を突破できなかったチームが参加するタイムアタック形式のレースです。その要求水準は非常に高く、昨年からの参加者でさえも多くの課題を克服できていない場合が多いのです。したがって、Silver Raceは「技術成熟度や走行性能を測る場」となっており、各チームの真価が試されます。

TGMGPは、開発期間がわずか半年という短期間でしたが、アルゴリズムの改良やGPS・センシングの問題を克服し、他の4チームを抑えての優勝を勝ち取りました。特に注目すべきは、若手エンジニア中心のチームが現地で自律走行の「生きた開発」を行った点です。自動運転・AI・ロボティクスの最前線で戦う中、日本のチームがその能力を発揮したことは、大きな意義を持ちます。

未来への展望と開発方針

自律走行技術は急速に進化を遂げており、1年ごとにその常識が塗り替わる状況です。A2RLのシーズン1では最高速度254km/hだったのが、シーズン2では295km/hに達しました。特に、人間とAIの対決において、元F1選手ダニール・クビアト選手とのタイム差は1秒まで短縮されています。

今後、TGMGPは以下の開発を進めていく予定です。

- 高精度な検知・識別性能向上（カメラ、LiDAR、レーダー）
- GPS依存度の低減（LiDARによる自己位置推定の高度化）
- 自動運転システム全体の安定性と安全性の強化
- 人間並みの判断能力とラップタイムを実現するための高度制御アルゴリズムの開発

2026年には、最高峰レースであるGold Raceへの出場を目指し、さらなる技術向上に挑み続けます。

新規パートナー募集

A2RLは、多様なテクノロジーを持つ企業が集まる国際プロジェクトです。TGMGPは、技術パートナー、スポンサー企業、若手エンジニア・開発メンバーを広く募集しています。我々の挑戦に共感して共に未来のモビリティを創造する仲間を求めています。

代表のコメント

今回のSilver Raceでの勝利は、現地で懸命に戦ったTGMGPのエンジニアたちの努力の成果です。彼らは連日課題に向き合い、数々の困難を克服してきました。この成果を誇りに思い、共に互いに切磋琢磨して自動運転技術のレベルを引き上げていることを実感しています。TGMGPは、これからも技術と情熱をもって挑戦を続け、日本を代表するチームとしてのステータスを築いていきます。