はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの人々に深刻な影響を及ぼしています。その中でも、感染後も長期にわたって症状が続く「コロナ後遺症」は、今も多くの患者が抱える問題です。この後遺症には、倦怠感、息切れ、思考力の低下、不眠などが含まれ、日常生活に支障をきたしています。2023年の厚生労働省の調査によると、感染後にコロナ後遺症を経験する割合が成人で11.7~23.4%に達していると報告されています。
これらの症状は個人差が大きく、特に倦怠感や呼吸困難、さらには脳の働きに影響を与える「ブレインフォグ」などが見られることから、生活の質(QOL)が著しく低下します。重度の場合、自宅で寝たきりとなり、医療サービスへのアクセスや就業が困難になるなど、社会的な問題に発展しています。
現在のところ、コロナ後遺症に特化した十分な治療法は確立されていませんが、先行研究においては、肺の機能障害や微小血栓に起因する「組織の酸素不足」が後遺症の大きな要因と考えられています。このため、呼吸器リハビリテーションが有効であるとされていますが、従来の方法では重度の患者には適さないことも少なくありません。
研究の目的と方法
ヒラハタクリニック(三)の平畑光一氏と、のざき鍼灸治療院の野崎真治氏が協力し、呼吸リハビリテーションのオンライン指導の効果を検証する研究を行いました。国立大学法人東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターの新井田厚司講師の協力を得て進められたこの研究は、呼吸リハビリテーションが実際にコロナ後遺症の症状に改善効果をもたらすかどうかを明らかにすることを目的としています。
研究では、COVID-19から6カ月経過した20名の患者が対象となり、ガーミンのスマートウォッチを装着してもらいました。患者は週に一度、呼吸リハビリのオンラインセッションに参加し、その効果を測定するため、質問調査とスマートウォッチのデータを取得しました。データは、リハビリ開始前後で比較し、症状の変化を分析しました。
結果
結果として、患者間で効果にはばらつきが見られたものの、息苦しさや倦怠感、体の痛みといった症状には顕著な改善が確認されました。また、スマートウォッチから得られたデータを基に、不眠と起床時間との関連が示されました。特に、患者からは夜遅くまで眠れなくなったという声が寄せられ、起床時間の遅れと不眠改善の関連性が見てとれました。
まとめと今後の展望
今回の研究を通じて、呼吸リハビリオンライ指導がコロナ後遺症に対して有効である可能性が示唆されました。株式会社Anapanaが今後、呼吸リハビリを効果的に支援するアプリの開発に着手し、共同研究を通じてその効果をさらに科学的に検証する予定です。このアプリが、多くの患者にとっての希望となることを願っています。
取材依頼・お問い合わせ先
株式会社Anapana
担当:野崎真治
より詳細な情報を希望される方は、お気軽にお問い合わせください。