感動の児童文学『この銃弾を忘れない』
内戦の真っただ中にあるスペインに生きる少年ミゲルの物語、これはただのフィクションではありません。実際の歴史を基にしたこの作品は、家族の絆、勇気、そして成長をテーマにし、読む者の心に深く響く感動的なストーリーです。
背景とあらすじ
物語は1938年、スペインの北部から始まります。内戦が始まってから2年が経ち、ミゲルの父は民主主義を守るために戦争に身を投じ、行方不明となっています。13歳のミゲルは、家庭を支えるために学校を諦め、働く日々を送っています。しかし、運命の転機が訪れます。父の知り合いが帰郷し、父が200キロも離れた町の収容所に囚われていることを知らされるのです。母との会話の中で、「食べ物を持って父を連れて帰ろう」と提案することが、彼の冒険の始まりとなります。
危険と友情の旅
ミゲルは、忠実な犬グレタと共に、父の元へ向かう旅に出ます。しかし、その道のりは決して容易ではありません。オオカミがいる険しい山道、さらには様々な人々—逃亡者、軍人、治安警察官—に出会いながら、彼は未知の世界に踏み込んでいきます。途中で出会う親切な人々や、心に残る少女との交流を通じて、ミゲルは若き心の成長を遂げていくのです。彼の旅は、単に物理的な移動だけでなく、精神的な成長の過程でもあります。
現代の読者へのメッセージ
この物語は、スペイン内戦を背景にしていますが、戦争という過酷な状況は現代においても他人事ではありません。内戦を知らない現代の中高校生に向けて、作者は特に分かりやすい表現を工夫しており、その結果、多くの若い読者から高い評価を得ています。受賞歴も豊富で、中高校生が審査員になった文学賞をはじめ、多くの賞を受け取っています。
作者の紹介
本作の筆者であるマイテ・カランサは、スペイン・バルセロナ出身の実力派児童文学作家です。人類学を学んだ後、教師としての経験を経て1986年に作家デビューを果たしました。彼女は数多くの権威ある文学賞を受賞し、特に『魔女の戦い』は三十か国語に翻訳されています。
翻訳者について
翻訳を手掛けた宇野和美は、スペイン語の専門家であり、スペイン文学の翻訳において非常に高い評価を得ています。彼女は児童書の翻訳にも力を入れており、多数の作品を日本語に翻訳しています。
書誌情報
- - タイトル:この銃弾を忘れない
- - 作:マイテ・カランサ
- - 訳:宇野和美
- - 定価:1870円(税込)
- - 発売日:2024年12月18日(水)
- - 判型/ページ数:B6・224ページ
- - 発行:徳間書店
この作品は、現在を生きる私たちに何を伝えてくれるのでしょうか。心を打たれる物語を通して、歴史の中から学ぶことができる一冊です。