新しいアートスタイル「彩音戯画」とは
横浜に位置する就労継続支援B型施設「ラボメン」と、原宿のインクルーシブカルチャーブランド「irotoa」の共創によって生まれた新たなアートスタイル「彩音戯画(カラートーンアート)」。
このスタイルは、「Cartoon Art」という言葉をもとに、色(彩)と命の響き(音)、そして遊び心を融合させたものです。一見交わることのないように思える二つの拠点が、互いの理念や感性を響かせ合い、新たな価値を創造しています。
5つの架け橋
1. 個性の色をつなぐ
「彩音戯画」において、アートは決して他者の模倣や流行のトレンドではありません。制作にあたっては、作り手の人生経験や感覚、さらにはその瞬間の感情が色彩として表れます。例えば、通勤途中に見た朝焼けの美しさや、子供時代の花火の記憶が絵に色を添えるのです。これにより、irotoaが提唱する「個性の色」が、ラボメンの表現力によって唯一無二の作品に仕上がります。
2. 命の音を重ねる
その制作現場は、筆の音、ミシンのリズム、笑い声で満ちています。昼下がり、光が差し込む空間での紙を切る音や、手の微細な動きもこの場の音楽。こうした日常の中が「命の音」となり、irotoaが大切にしている人と社会を結ぶ響きに繋がります。
3. 福祉とカルチャーを結ぶ
多くの福祉施設では、作品が福祉的背景を考慮されることが多いですが、ラボメンとirotoaのアートは、背景を知らない人たちにもその魅力を訴えかけます。原宿の店舗に並んだ瞬間、それは単なる支援の産物を超えて文化の一部として認識されます。
4. 利用者からクリエイターへ
ラボメンのアーティストたちは「施設利用者」という枠を超えて、irotoanistaとしてクリエイティブな活動を行います。彼らの作品への自信は増し、その表現は守られる存在から社会に問いかける創造物へと変化します。
5. 一点物の価値を世界へ
偶然のにじみや色の混ざり合いが特徴の作品たち。どれも唯一無二であり、持ち主に「自分だけの色」であるという感覚をもたらします。これこそが「個性を纏う」という価値です。
ラボメンアートの深層
作品制作は日常生活と密接に結びついています。例えば、街の色や家族との会話からインスピレーションを受け取り、色選びにはその人ならではの思い出が込められます。作品制作の過程は静かな集中から始まり、やがて仲間との会話や笑顔が広がる空間に変化します。このような情熱の中で、彩音戯画は原画のみの一点物販売に特化し、その価値は高まっていきます。
松橋代表の人物像
ラボメンの松橋健太代表は、4児の父であり、そのうち二人の息子が自閉症です。彼は、息子たちの未来を考え、「好きなことで生きていく」選択肢を作るために事業を立ち上げました。現場では作業台に立ち、利用者との共創を重視しています。彼は「支援」という言葉ではなく、共に作り出すことに重きを置いています。
社会的意義と未来
この取り組みは単なる作業内容を超え、市場で通用する価値への変革を図ります。また、作業所の進化や福祉施設との連携を進め、就労支援B型事業所を「文化発信拠点」としての役割を果たす可能性が開かれています。ここで注目すべきは、才能が生まれつきの感性だけではなく、磨くことからも生まれる場面です。障害はその人の一部でありながら、それだけで評価されるものではなく、努力と工夫によって初めて社会に通じる価値が生まれるのです。このように、多様性が共鳴する未来が、新たな形で進化し続けています。