介護業界に新たな風を吹き込むヤマシタのARアプリ
介護用品や福祉用具のレンタルで知られる株式会社ヤマシタが、AR(拡張現実)を活用した配置アプリを全社に展開しました。この新しいアプリは2025年7月から全国約80の営業所で利用され、在宅介護サービスにおける提案業務を大幅に改善します。社員のアイデアから生まれたこのアプリは、ユーザーが介護用品の配置を視覚的に確認できるため、ユーザーの納得感を高めるだけでなく、業務の生産性向上にも寄与します。
課題の背景
多くの高齢者が住み慣れた自宅で安全に生活するためには、適切な介護用品の選定と配置が不可欠です。しかし、これまでは介護用品のサイズ感や配置後の生活動線を顧客に具体的にイメージしにくく、しばしば導入後に「思っていたよりも大きかった」や「導線が狭くなった」といったトラブルが発生していました。
実際、介護用品の選定時には、複数の実機を持参し、設置してみるという対応がなされることが多く、納品までに思わぬ時間がかかる場合もありました。また、未使用の介護用品が再洗浄や再出荷を必要とし、物流面での負担も大きかったのです。これらの課題を解決するため、現場の社員からのアイデアをもとに、AR技術を用いた「直感的に使える配置アプリ」の開発が始まりました。
AR配置アプリの具体的な機能
このアプリの最大の特徴は、AR技術により、実際の居室空間に介護用品をリアルサイズで表示できる点です。利用者はiPhoneを使って、その場でシミュレーションを行うことが可能です。さらに、配置イメージは画像として保存できるため、提案資料や報告書にも活用できます。
このアプリは、営業担当者が「もっと簡単に、最適な提案がしたい」とのニーズをもとに、DX推進部門が「Microsoft Power Apps」を用いてプロトタイプを作成し、現場の社員と改善を重ねて実証を行った後に全社に導入されました。現在は介護公式が特に大きい製品に対応しており、今後も対応商品の拡充が予定されています。
導入による成果
新たなARアプリを導入することで、顧客への提案内容に対する納得度が向上しました。具体的には、設置前に空間との相性を確認できるため、導入後のトラブルを防ぐことができるようになりました。また、提案の際に持参する介護用品の数量を25%削減し、業務効率も飛躍的に向上しました。
今後のアプローチ
ヤマシタは現場主導の業務改善を進める中で、ローコード・ノーコード開発をDX戦略の中心に据えています。2024年度には3回の社内ハッカソンを実施し、70名以上の開発者を育成する計画です。こういった取り組みによって、優先順位が低く後回しにされがちな業務課題にも迅速に対応できる体制を整え、全社的なDXのスピードと質を向上させることを目指しています。今後は、ARアプリのように顧客体験や業務効率の向上を実現するアプリを開発し、在宅介護業界でのプラットフォーマーとしての地位をさらに強化していく方針です。
株式会社ヤマシタの概要
株式会社ヤマシタは1963年に設立され、「正しく生きる、豊かに生きる」という企業理念のもと、リネンサプライおよび介護用品のレンタル・販売で業界大手の地位を築いてきました。今後もDXを推進し、品質向上と生産性の改善に努めながら、2030年には850億円、2050年には売上高1兆円を目指すという長期的な目標を掲げています。