スタートアップ転職の現状と未来
近年、日本におけるスタートアップへの転職者数が急増しています。株式会社リクルートによると、スタートアップ企業への転職者は2015年度と比較して3.1倍にまで増加しています。特に40歳以上のミドル・シニア層の転職者数が顕著に伸びており、その背景にはさまざまな要因があるとされています。
スタートアップの重要性と政府の施策
日本の経済成長や雇用の創出において、スタートアップは欠かせない存在になっています。政府もこの流れを支持し、2022年には「スタートアップ育成5か年計画」を策定しました。この計画は、官民での協力を通じて新しい資本主義を促進することを目指しています。アメリカの企業に比べて、日本のユニコーン企業創出が遅れている現状を受け、スタートアップが急速に成長できる環境を整備することが求められています。
スタートアップの中で特に注目されるのが、「人材」の面です。起業人材を育成することはもちろん、設立後のスタートアップに人材を集めることが難しいという課題があるのです。このため、リクルートは、転職者数と求人数の動向を分析し、スタートアップへの転職の現状を明らかにしました。
求人の伸びと転職者数
リクルートのデータによると、2023年度におけるスタートアップへの転職者数は、2015年度を基準にした場合、3.1倍に増えています。しかし、求人の数はそれ以上の6.8倍に達しており、人材ニーズに対して転職者数が追いついていない状況です。
求職者がスタートアップへの転職をためらう理由として、企業文化や給与、働き方に対する不安が挙げられています。しかし、実際にはミドル・シニア層の働く環境は改善されてきており、多様な働き方を提供する企業も増加しています。また、給与も大企業に劣らない水準になってきており、スタートアップの魅力が高まっています。
年齢層別の転職者数の推移
年代別に見ると、スタートアップ企業への転職者数は40歳以上で7.1倍に達しているのに対し、20~39歳層は2.7倍にとどまっています。これは、スタートアップが従業員のワークライフバランスに配慮する企業が増えたことが影響しており、特にディープテックなどの先進技術に特化したスタートアップでは、ミドル・シニア層の経験と知見が求められる傾向があります。
転職時の年収水準
転職時に提示された年収についても変化が見られます。400万円未満の転職者割合は67.4%から41.5%へと大幅に減少しており、400万円以上の年収帯での転職が増加しています。特に400万円以上600万円未満の割合が増えていることから、スタートアップで働くことの経済的魅力が高まっていることが伺えます。この背景には、スタートアップ企業の資金調達が活発になっていることや、補助金などの支援も影響しています。
事例:大企業からスタートアップへ
実際に、金融機関からスタートアップの事業開発職に転職を果たした40代の男性は、スタートアップの裁量の大きさや経営陣との距離の近さに魅力を感じて移籍しました。従来の大企業では得られないダイナミックな環境での仕事に挑戦することで、自らの成長を実感していると語っています。
まとめ
スタートアップへの転職は、経済的な要因やワークライフバランスの改善など、さまざまな要因によって拡大しています。特にミドル・シニア層の増加は、ただの人手不足を超え、組織の活性化や新しい価値創造への貢献が期待されています。今後もスタートアップは、働き手にとって魅力的な選択肢であり続けるでしょう。