損保ジャパンが提供するAI活用型照会回答支援システム
1. 生成AIによる業務効率化の背景
損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)は、全国の営業店や本社に向けて、生成AIを活用した照会回答支援システム「おしそんLLM」を2025年6月にリリースすることを発表しました。このシステムは、営業現場と本社との間で行われる照会回答業務を効率化することを目的としており、生成AIの大規模言語モデル(LLM)を利用することで、より迅速で正確な情報提供を可能にします。
1.1 背景と目的
損保ジャパンは2017年に社内ナレッジ検索システム「教えて!SOMPO」の運用を開始し、散在するQ&Aやマニュアルを自然言語で横断的に検索できるようにしました。このシステムによって、照会業務の効率化が進んだものの、年間で約67万件もの照会が寄せられる現状から、さらなる業務負荷の軽減が求められていました。この課題を解決するため、2023年には新たなシステムの開発に着手し、2024年度には一部営業店でのトライアルを行いました。このトライアルにより、「おしそんLLM」が対応可能な照会の約60%に対して、40%もの業務時間の削減が実証され、全国展開が決定しました。
2. 「おしそんLLM」の技術概要
「おしそんLLM」は、損保ジャパンが蓄積した大量のマニュアルやQ&Aデータを基に、照会内容に対して最適な回答案を自動的に生成するシステムです。システムは社内のエンジニアチームが内製で開発しており、ユーザーのフィードバックを元に素早く改善が可能です。これにより、常に最新の状態で利用することができ、トライアル中から継続的な改善を重ねてきています。
2.1 利用フローと機能
本システムでは、生成AIが提案する回答案と参照資料が画面に表示されます。回答者はこれを元にして回答を作成することで、業務の迅速化と品質向上が図られます。ハルシネーションリスク(AIが誤った情報を生成するリスク)を抑えつつ、業務効率化を達成することが目指されています。
3. 今後の展望
今回のシステム導入によって得られるデータを基に、損保ジャパンはさらなる学習サイクルを回し続けることで、回答の精度向上を図ります。今後は「おしそんLLM」の対象範囲を拡大し、メンテナンス業務の効率化を進め、より多岐にわたる業務での利用を検討しています。
これにより、従業員が創出した時間を顧客向けの商品やサービスの質向上に回し、さらなる顧客満足度の向上を目指します。
セキュリティにも十分配慮しつつ、AI技術の進化を取り入れた損保ジャパンの新しい試みは、業界内外で注目を集めています。