京都の文化と歴史を背景に描かれる小説『スピノザの診察室』が、第12回京都本大賞を受賞しました。この賞は、京都を舞台にした小説の中で、特に地元の人々に読まれてほしい作品を選ぶ大変名誉なものです。
このたびの受賞は、書店店頭とウェブでの一般読者投票の結果、10月31日に決定されました。受賞式では、実行委員長の洞本昌哉氏が、賞状と盾を著者の夏川草介さんに手渡しました。洞本氏は受賞作の評価について、「この作品は、淡々とした京都の姿とともに、死や生について深く考えさせられる内容だ」と述べました。
著者の夏川さんも、受賞に際し感謝のメッセージを寄せました。彼は大阪出身ですが、学生時代に通っていた予備校や友人が多く京都に住んでいたことが影響し、思い出の街として特別な思い入れがあります。「『スピノザの診察室』は、その懐かしい京都の街並みを大切に描いた作品です。時間が経っても変わらないものが残る京都の楽しさを、読者に届けたい」と語っています。
『スピノザの診察室』は、医師としての葛藤を描いた心温まる物語です。物語の主人公・雄町哲郎は、地域の病院で勤務する内科医。妹を失った悲しみを抱える彼は、甥の龍之介とともに日々を過ごしながら、医師としての仕事を全うする姿が描かれています。かつて大学病院での難手術を成功させ、多くの期待を背負っていた哲郎は、愛弟子の南茉莉を研修生として受け入れることになり、さまざまな出来事に直面します。
本作は、すでに2024年本屋大賞で第4位に選ばれるなど、さらなる注目を集めています。また、映画化も決定しており、2025年にはシリーズ第2作の刊行も予定されています。
夏川草介さんは2009年に『神様のカルテ』でデビューし、その後も多くの著作を発表しています。『スピノザの診察室』は、彼のライティングスタイルと、医師としての経験を活かした内容が融合した作品として進化を続けています。読者がこの作品を通じて、京都の風景を想像し、そこに込められた思いを感じ取れることを期待しています。
【書籍情報】
書名:スピノザの診察室
著者:夏川草介
発行元:水鈴社
刊行日:2023年10月27日
定価:1,870円(税別)
頁数:288頁
体裁:四六判上製
装丁:名久井直子
装画:五十嵐大介
電子書籍:同日同価格発売
この受賞をきっかけに、新たな読者が『スピノザの診察室』と出会い、京都の魅力を味わいながら、生命や死について考えるきっかけになることでしょう。受賞式の様子や著者のインタビューは、京都本大賞の公式サイトで見ることができます。