木造技術で目指す日本のレジリエンス強化に向けての新提言

序章

仮設住宅という言葉は、災害時の生活を支える重要な手段として認識されていますが、その技術や供給の現状についてはあまり知られていません。一般社団法人日本モバイル建築協会の長坂俊成氏は、住宅産業における「木造力」と「レジリエンス」を見直す新しい概念を提唱し、その重要性を広めるための書籍を発表しました。本書『新住宅産業論仮設住宅が問いかける日本の「木造力」と「レジリエンス」』の内容と、それが私たちに何を示唆しているのかを探ります。

木造仮設住宅の必要性

南海トラフ地震が発生した場合、日本では84.4万戸の仮設住宅が必要とされています。しかし、長坂氏はこの数字を見て、現在の住宅産業界がその需要にどれだけ応えられるか疑問を持っています。彼自身の経験から、実際の生産能力を鑑みると、十分な量の仮設住宅を供給するのは不可能に近いという現実が浮かび上がってきました。

住宅サプライチェーンの改革

このようなニーズに応えるためには、単に仮設住宅を作るだけでなく、平常時からの供給体制を見直す必要があります。長坂氏は、工業化手法を採用することで、仮設住宅の供給能力を高める新たな「住宅産業」を構築することを提案しています。この新たな枠組みでは、効率的な生産体制の確立と、迅速な供給が可能な仕組み作りが求められます。

必要とされる木造技術

木造建築は、日本の伝統的な技術でありながら、近年その需要は高まっています。木材は再生可能な資源であり、地震に対しても強い特性を持つと言われています。これにより、長坂氏は、木造仮設住宅が持つ可能性を信じています。本書では、木造を用いた仮設住宅の設計や技術、そしてそれを支える人々の知恵が紹介されています。