シニア派遣の新たな可能性を探る
株式会社リクルートスタッフィングが実施した「60歳以降の就業」に関する調査からは、シニア世代が自身の経験とスキルを活かして働く姿が浮かび上がる。日本社会におけるシニアの働き方は、これまでの常識を覆すほどの変革を遂げている。調査結果によれば、60歳以上の派遣スタッフの約83%が、これまでのキャリアや専門スキルを活かして働いているとのこと。
全体像とシニアの活躍
シニア層が増加する中、総務省の労働力調査の結果によれば、専門的・技術的職業や事務職に就く58歳以上の比率は減少傾向にある。ただし派遣の分野では、60歳以上のプロフェッショナルが急激に増加してきている。特に高時給の専門職として事務やIT職において、その数は5年間で約5.14倍にも達している。
この背景には、自身のスキルをフル活用したいシニア人材と、彼らの深い経験を必要とする企業とのマッチングの進展がある。56%のシニアスタッフが「自らの専門スキルが、職場に貢献できたと感じる」と回答しており、この現象は、企業にとっても新たな価値の創出につながっている。
アンケート結果が示す現実
この調査には1198件の有効回答が寄せられた。以下はその主要な結果である。
1.
理想の働き方を尋ねると、最も多かったのは「自分のスキルを活かせる働き方」で約67%が選択。
2.
60歳以降に実際に行っている仕事の分野は、約76.6%がオフィスワークの事務系職と回答。
3.
実際に活用されているスキルには、ITスキルやデータ分析、語学力などが挙げられた。
さらに、約15%の回答者が自身の専門スキルが「新たな価値創出」につながったと実感していると答えており、プログラミングスキルを用いたシステム開発や業務の自動化に取り組んでいる事例も多く見られた。
経験を生かす場面
回答者たちから寄せられた意見の中には、具体的な業務のフォーカスに基づいたものがあった。ある60代のAさんは、ソフトウェア開発の経験を活かして、米国製ソフトウェアの翻訳業務におけるプロセス改善に取り組んでいる。「自分の過去のスキルを活かせる忙しい職場で働いていることに誇りを感じています」と彼女は語る。
データ分析に関わるBさんも、シニアになってもなお新しいスキルを積極的に身につけることで、職場での役割を感じながら貢献している。彼は「若い世代とも同じフィールドで仕事をできることにワクワク感を覚えます」と述べる。
スキルアップに対する意欲
調査では、60歳以上の回答者の61%が「今後、スキルアップに前向きである」と答えた。具体的には、PythonやVBAなどのプログラミング技術、AI技術、クラウド技術に関心を寄せるコメントが目立った。それぞれのシニアが「自分にできる新たな挑戦」を求めている様子がうかがえる。
大多数のシニアが、働きながらも自己成長を第一に考えていることが、既存の固定概念を刷新する助けとなっているのだ。
まとめ
今回の調査結果は、60歳を超えてもなお活躍できる道があることを強調している。リクルートスタッフィングは、シニアの経験やスキルをマッチングさせることで、様々な企業にとっての新たな価値創出を目指している。これからの社会はシニアの知恵と技術が重要な役割を果たし、そのためのサポートが求められている。彼らが「らしく」働ける社会を実現することが、この調査の根底にある理念であることを忘れてはならない。