2024年度、国立科学博物館が選定する重要科学技術史資料に、三菱電機株式会社が1972年に発売したワイヤ放電加工機「DWC-50」が登録されることが正式に発表されました。登録日は9月10日で、同日に行われる登録証授与式が国立科学博物館で開催される予定です。
ワイヤ放電加工機は、導電性のある硬度の高い金属を加工するための機械で、特に金型加工の分野で広く普及しています。この機械は、電圧がかけられたワイヤと加工対象の間に放電を発生させ、その現象を利用して金属を溶融させることで、工作物を精密に加工します。具体的には、XYテーブルを自動制御し、ワイヤがまるで糸鋸のように動きながら加工を行います。
1970年代当初、国内では金型製造のニーズに応えるためのワイヤ放電加工機が求められていましたが、その導入にはいくつかの技術的制約がありました。特に、当時は高機能なNC装置が十分に存在せず、コスト面でも課題がありました。そんな中、三菱電機は市場の期待に応えるべく、米国で開発された光学式図面倣い装置を制御システムに採用することで、初の日本製ワイヤ放電加工機「DWC-50」を実現しました。この迅速な市場投入は、日本の製造業の技術力向上に寄与し、特に金型産業の発展に大きな影響を与えたことが今回の評価につながっています。
最近、重要科学技術史資料(未来技術遺産)に関する登録が行われることで、これまでの技術の進化とその重要性が再認識されています。未来技術遺産は、国立科学博物館が選定するもので、科学技術の発展に重要な意義を持つ成果や、国民生活や経済、社会、文化に顕著な影響を与えたものとして登録される資料を対象としています。この取り組みは、2008年度から始まっており、今年も多くの優れた技術が評価されています。
三菱電機は、今後も放電加工機の更なる技術革新に尽力していくとしています。金型製作だけでなく、さまざまな産業のニーズに応えるために、先進的な技術を駆使して製品を開発する姿勢を継続する方針です。過去の技術はもちろん、未来の技術も視野に入れた取り組みが、今後の製造業においてますます重要になるでしょう。
このように、三菱電機の「DWC-50」の登録は、単なる歴史的な出来事ではなく、現代の技術革新に向けた重要なステップとも言えます。過去の経験を基に、未来技術遺産としての地位を確立し、さらなる発展を目指す姿勢は、多くの企業にとっての模範となることでしょう。