新刊『「見えない都市」を歩く文学で旅するイタリア』の魅力
2025年3月26日、NHK出版から新たに発刊される『「見えない都市」を歩く文学で旅するイタリア』は、イタリアの各都市を訪ねて文学作品と対話するという新しい旅のスタイルを提案します。この書籍は、イタロ・カルヴィーノやチェーザレ・パヴェーゼ、ウンベルト・エーコなど、名だたる作家たちの作品を通じて、訪れた街の真髄を探るものです。著者の和田忠彦氏は、イタリア文学に精通した研究者であり、この書籍を通じて多くの読者に新たな視点を提供しています。
本書の特色と目的
本書では、都市そのものが文学作品の舞台としてどのように表現されているのか、そしてその背景にある文化や歴史を掘り下げていきます。例えば、カルヴィーノの描く街の風景は、彼の故郷であるサンレモのイメージと密接に結びついています。このように、著者はイタリアの文学作品を「街」というコンテクストから読み解くことに力を入れています。
また、作品を通して描かれた街々、言い換えれば《伝記的都市》は、作家たちがどのように感じ、考え、描写したのかを理解する手助けをしてくれます。それにより、著者は読者に対し、単に物語を楽しむフレームから一歩踏み出し、それぞれの作品が生まれた背景を知ることの重要性を訴えています。
旅の構成について
本書は、「はじめに」に続いて13章から成り立っています。「旅立ちにあたって――《見えない都市》とヴェネツィア」から始まり、旅行者の視点で各都市を巡っていきます。各章の構成は、特定の作家に焦点を当てたものや、特定のテーマに基づくものがあり、それぞれが独立した旅のエピソードとして楽しむことができます。
一例として、タブッキの作品が描くジェノヴァでは、まさに旅の出発点としての謎や夢の要素が盛り込まれています。このように、各章は単なる地理的な移動だけでなく、文学作品を通じての内面的な移動にも焦点を当てています。
文化と歴史の融合
本書の魅力は、文学作品一つ一つが細部にわたってイタリアの文化と歴史と結びついている点です。特に、各都市が持つ独自の生活文化や歴史的背景は、作品の中でどのように反映されているのか、といった点を考察することで、読者は新たな気づきを得ることができるでしょう。
さらに、著者は25年以上にわたりイタリア文学を研究してきた専門家として、作家たちの視点を深く掘り下げることで、読者にとって価値ある情報を提供しています。これは、単なる観光案内書ではなく、文学の深さを感じながら旅を楽しむためのガイドブックとしての機能を果たしています。
読むことと旅することの関係
また、読むことと旅することの相互関係についても言及しています。本書を通じて、旅というフィルターを通して感じる文学の楽しさは、まさに著者が提唱する《見えない都市》を歩くことの意味をもたらします。読者は、単なる物語を追うのではなく、作品を手に取り、それをフィルターにして自らも旅をし、想像力をかき立てることが促されます。
おわりに
イタリアの名作文学を巡りながら、実際にその地を歩く感覚を楽しむことができる本書は、文学ファンだけでなく旅好きにもおすすめの一冊です。旅立ちの準備をしながら、イタリアの文化と想像力に浸る準備をしてはいかがでしょうか。
出版の際の詳細情報は以下の通りです。
- - 著者: 和田忠彦
- - 出版社: NHK出版
- - 定価: 2,200円(税込)
- - 発売日: 2025年3月26日
- - ページ数: 272ページ
- - ISBN: 978-4-14-081985-2
この新刊に注目し、ぜひ手に取ってみてください!