山形大学とTOPPANホールディングスの共同研究
国立大学である山形大学とTOPPANホールディングス株式会社は、2024年3月から乳がん患者の治療実態を明らかにするための共同研究を開始します。医療ビッグデータの活用を通じて、患者の診療状況や治療内容を解析し、医療の質の向上を目指します。
研究の背景
日本における乳がん患者数は年々増加しており、2021年には約10万人の新規患者が診断されています。乳がん治療には高治療効果を持つ化学療法が含まれますが、同時に吐き気や脱毛、白血球の減少といった副作用も伴います。これらの副作用に関する適切な対策が求められています。
山形大学の第一外科乳腺チームは、河合賢朗准教授をリーダーとして、専門知識をもって乳がん患者のケアに取り組んでいます。一方で、TOPPANホールディングスは、匿名加工された電子カルテデータを基にした医療情報分析サービス「DATuM IDEA®」を提供し、医療の質向上に寄与しています。
研究の目的と概要
新たな研究では、全国53の医療機関から約2000名の乳がん患者を対象に、それぞれの投与状況や治療内容に基づいて5つのグループに分類します。 この解析を通じて、特に抗がん剤の副作用により好中球数が減少し、感染症のリスクが高まる患者グループの特定を目指します。
好中球は白血球の中でも特に細菌や真菌感染から守る重要な細胞です。好中球が減少すると、患者は感染症にかかりやすくなるため、今後の研究結果を基にそのリスクを軽減するための対策が求められます。 研究チームは、これを医療の質向上につなげるため、好中球の減少を防ぐ薬剤の適時投与を検討しています。
学会発表の予定
この研究の結果は2025年7月10日から12日にかけて開催される「第33回日本乳癌学会学術総会」にて発表される予定です。そこで、研究成果がどのように医療実践に貢献し得るのかが議論される予定です。
ポスターディスカッション
演題名は「次世代医療基盤法による医療ビッグデータからみたアンスラサイクリン・タキサンによる乳癌周術期療法の現状」で、山形大学の河合賢朗准教授が発表いたします。会場は工学院大学の新宿キャンパスで、発表時間は約6分となります。
今後の展望
山形大学とTOPPANホールディングスは、今後も実臨床の状況を研究し続け、蓄積した医療ビッグデータを利活用しようとしています。この研究を通じて、健康寿命の延伸や持続可能な社会の実現に向けた貢献を続けていく方針です。
医療業界におけるこうした取り組みが、乳がん患者にとっての治療の質を高めることにつながることが期待されます。