日立がCMOSアニーリング技術を開発
日立製作所は、複雑な制約条件を遵守しつつ大規模な組合せ最適化問題を迅速に解決するためのCMOSアニーリング技術を新たに開発した。この革新技術により、鉄道の運行計画や金融ポートフォリオ管理など、社会の多様なニーズに応えることが可能になる。
CMOSアニーリング技術とは?
CMOSアニーリング技術は、大規模な最適化問題に対する新しい解法であり、数十万の変数や数万の制約条件を持つ問題を短時間で解決する能力に優れている。この技術は、CMOSアニーリングと呼ばれる手法を中心に、最適化ソルバというアルゴリズムを組み合わせている。
具体的には、CMOSアニーリングが最適化問題の質の高い解を見つけ、その後最適化ソルバが制約条件を満たす解を周辺で探ることを繰り返す仕組みになっている。この方法によって、問題を効率よく分割し、各部分を別々に解決する「交互方向乗数法(ADMM)」というアルゴリズムを採用しているのである。
最新技術がもたらす利点
この技術によって、従来の方法では難しかった大規模な組合せ最適化問題を迅速に処理できるようになったため、鉄道業界では新しい運行計画の策定に、大幅な時間の短縮が期待される。同様に金融分野においても、ポートフォリオの最適化やリスク管理においても効果的に活用されることが予想されている。
例えば、鉄道の運行計画では、ダイヤ改正ごとに複雑な条件をクリアしながら運行する車両を選定する必要がある。この過程では、検査や車庫の収容能力といったさまざまな制約条件を守りながら、最低限の車両数で効率的な運行計画を策定する必要がある。CMOSアニーリング技術は、こうした複雑なニーズに応えるための強力なツールとなるだろう。
今後の展望
日立は、このCMOSアニーリング技術を今後クラウドサービスとして提供する予定であり、具体的には金融や鉄道などの分野でさらに応用していく考えだ。顧客との協創を重視し、技術の高度化を進めることで、さまざまな社会課題の解決に寄与するとしている。また、この成果は国際的な研究会議「International Workshop on Ising Machines(IISM)2025」においても発表される予定で、業界全体での注目を集めている。
この新技術は、日々複雑化する産業課題に対して、持続可能な解決策をもたらす可能性が高い。日立の革新技術は、未来の社会を形作る重要な要素となるだろう。