ICML 2026での研究発表が注目を集める
2026年7月、韓国で開催される機械学習のトップカンファレンスICMLにおいて、京都大学研究員の藤岡裕平氏や三澤大太郎氏、福間真悟教授との共著論文が採択されました。本論文は「Pretrained Medical Representations for the Practical Screening of Drug Repositioning Candidates」というタイトルで、医療分野における機械学習の活用に新たな視点を提供しています。
研究の背景
近年、電子カルテやレセプトデータと呼ばれる医療費請求に基づくデータの解析が進んでいます。これらのデータには、患者の病歴や治療歴、診断に関する情報が豊富に含まれており、機械学習によってこれらを数値ベクトルに変換し、疾患予測に役立てる研究が行われています。しかし、創薬リポジショニングのような仮説生成に関しては、いくつかの重要な課題がありました。「BERT」と呼ばれる手法は、医療コードの階層構造を正確に捉えられず、また、膨大な医療コードを学習することが非効率であることが指摘されています。さらに、診断と治療の複雑な相関関係を適切に扱えないという限界もありました。
新たな手法の提案
本研究では、これらの課題を克服するための新しい統合的な事前学習の枠組みを提案しました。具体的には、以下の三つの手法を採用しています。
1.
階層的サブトークン集約(HSA): 医療コードの階層構造を捉えることができます。
2.
部分マスキング(PM): 学習効率を向上させるための手法です。
3.
クロスリファレンス機構(CR): 診断と治療の相互参照を考慮するための仕組みです。
さらに、仮説の生成と優先順位付けに対応するために、「タスク適応型表現アプローチ(TARA)」を導入。これにより、目的に応じた最適な表現の使い分けが可能となりました。
実験結果とその意義
この研究においては、約500万人分の匿名化されたレセプトデータから抽出した数万人規模のデータセットを用いて実験が行われました。結果として、提案手法は事前学習タスクで正解率0.5867を達成し、従来のモデルを大きく上回る成果を上げました。また、認知症発症の予測においてもPR-AUCが10%向上し、創薬リポジショニングにおいてはデータのみから新たな薬剤の関連性を発見することに成功しました。これにより、学術界や医療現場における新たな可能性が期待されています。
今後、このアプローチが医療だけでなく、様々な分野でのデータ解析や仮説生成に応用されることで、より効果的な成果が得られることが期待されます。なお、本研究の結果はあくまで仮説の生成と優先順位付けに焦点を当てたものであり、因果関係の証明を目的としたものではありません。