NTTグループとメタウォーターがIoT/AIを活用した実証実験を開始
NTTグループとメタウォーター株式会社は、上下水道施設の保守点検業務の自動化に向けた実証実験を2025年10月から開始することを発表しました。このプロジェクトでは、IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow)などの先進技術を用いて、上下水道施設内のネットワーク環境を最適化し、IoTやAIを活用した新たな保守点検方法を模索します。
背景
日本の上下水道事業は、自治体の財政難や技術者不足、施設の老朽化といった複雑な問題に直面しています。これに対応するために、政府は2023年6月に公民連携方式「ウォーターPPP」を導入し、民間企業の役割を拡大しています。この新たな方式に基づき、事業の包括化や広域化が進むことが期待されています。
現在、上下水道施設の保守・点検は、高度な技術と経験を持つ現場作業員による目視確認や巡回に依存しています。しかし、技術者不足が深刻なため、現場の業務効率化が求められる状況です。
メタウォーターが蓄積してきた公民連携事業の経験とNTTグループのDX推進実績を結集し、革新的な水インフラを構築するための実証実験が始まることとなりました。
取り組み内容
1. 情報通信ネットワークの最適化
上下水道施設の特性を鑑み、効率的な情報通信ネットワークの構築が必要です。このために、NTTグループとメタウォーターの共同開発による「WBC(Water Business Cloud)」プラットフォームを利用し、運用サポートセンター(OSC)での実施を通じて、保守・点検業務の自動化の基礎となる最適なネットワーク環境を整えます。
2. 保守点検業務の自動化
現場作業員が行っている機器や設備の確認、判断、記録をIoTセンサーやネットワークカメラを活用し、生成AIを使って人手なしで自動化します。このシステムは、AIが異常を検知した場合、迅速に作業員へ警報を出し、オペレーションサポートセンターに通知することで、適切なサポートを受けられる仕組みです。この取り組みによって、上下水道施設の運営は飛躍的に効率化されるでしょう。
実証実験の詳細
この実証実験は、栃木県宇都宮市の上下水道局、清原水再生センターで行います。期間は2025年10月から2027年3月までの予定です。このプロジェクトは、メタウォーターが宇都宮市から受託した維持管理業務契約に基づき、業務の品質向上を図るものです。
今後の展開
NTTグループとメタウォーターは、この実証実験を通じて、IoTやAIを活用した保守点検業務の有効性を検証し、本格的な実装に向けた準備を進めます。また、自治体のインフラ運営の課題解決にも向けて、蓄積された知見を活かして地域課題に取り組んでいくことを計画しています。
この取り組みにより、より持続可能な上下水道の運営体制が構築されることが期待されており、今後の進展が注目されています。