エチオピア出身の難民が昭和精工株式会社で正社員に
近年、日本社会において難民雇用の重要性が増しています。このたび、エチオピア出身の難民Rさんが、精密プレス金型メーカーである昭和精工株式会社に正社員として採用されたことが発表されました。NPO法人WELgeeの支援を通じて実現したこの採用は、中小企業における難民人材の活躍の先進事例として注目されています。
難民雇用の背景
昭和精工株式会社は、神奈川県横浜市に拠点を置く企業で、精密金型設計や部品加工を主な事業としています。缶ビールやレモンサワーの缶の金型、CD・DVD関連部品、自動車の部品など多岐にわたる製品を扱っています。ここでの採用決定は、迫害や紛争から逃れてきた人々が日本での新たな生活を築く一歩となります。
Rさんは37歳で、母国エチオピアで地質学を専攻し、政府関係機関で5年以上にわたって地質調査・研究業務に従事してきました。2017年に来日後、サバイバルジョブをしながら日本語の習得に努め、自身の専門性を活かせる職場を求め続けてきました。
新たなキャリアの始まり
Rさんの採用は、2024年8月に昭和精工の工場見学を経て実現しました。実際の業務に親和性を感じ、応募を決意。その後実施された6か月間のお試し雇用では、持ち前の真面目さと前向きな姿勢が評価され、特に海外出身の同僚との英語での円滑なコミュニケーション能力が選考の決め手となりました。2025年9月16日からは正式に正社員としての道を歩み始め、現在は成形課に所属し、半導体基板製造に関わる治具や副資材の開発、試作、量産に取り組んでいます。
昭和精工の担当者の声
昭和精工の担当者は「Rさんを採用できたことに感謝しています。外国人採用に対する不安もありましたが、Rさんの真面目な姿勢や成長を見ていると、他の外国人雇用にも自信が持てるようになった」と語りました。かつては外国人雇用に消極的だった同社も、この採用を通じて新たな期待を抱くようになりました。
WELgeeの役割
NPO法人WELgeeは、難民の就労支援を行い、自らの境遇にかかわらず共に未来を築ける社会を目指しています。Rさんのケースは、WELgeeが提供する支援がどれほど効果的であるかを示す一例です。
WELgeeキャリアコーディネーターの金城さんは「Rさんが未経験の職種に挑戦し、高い評価を得ることができたのは、彼の努力と、企業が彼の能力を受け入れてくれたからです。国籍を超えた仲間としての関係を築けていることも嬉しい」と語ります。これからもRさんのような人材が新たな職場で輝く未来が待っています。
難民を超えた個人としての尊重
WELgeeは、難民をただの保護対象として見るのではなく、彼らの持つ志や経験を尊重し、それぞれが自分らしい人生を再建する手助けをしています。Rさんのように、自己の専門性を活かしながら新たなキャリアを追求することができるよう、今後も様々な支援を通じてサポートを展開していくでしょう。
日本社会における難民雇用の実現に向け、そしてその先駆者となったRさんの成功事例は、多くの人々に新たな希望と可能性を提供しています。彼の明るい笑顔と共に、さらに多くの難民が自分らしい未来を手に入れることができる世界が訪れることを願っています。