EBウイルス関連疾患に挑む新しい治療法
順天堂大学の研究グループは、エプスタイン・バールウイルス (EBウイルス) に関連するリンパ腫や慢性活動性EBウイルス病に特化した治療法の開発を進めています。2025年8月より、医師主導による第I相治験が順天堂大学医学部附属順天堂医院にて開始されることが発表され、大きな期待が寄せられています。
1. 治験の背景と目的
この治験は、再発や難治性のEBウイルス関連リンパ腫及び慢性活動性EBウイルス病を対象としています。一般的に、これらの疾患は予後が厳しく、既存の治療法では十分な効果が望めない場合が多いため、治療法の開発が急務とされてきました。今回の治験は、iPS細胞由来の抗原特異的キラーT細胞(CTL)を用いた新しい治療方法の安全性を評価することを目的としています。
2. EBウイルス関連疾患の概要
EBウイルス関連リンパ腫は、発展途上国やアジア地域で特に増加しており、急速に悪化するリスクを伴っています。中でも節外性NK/T細胞リンパ腫は、治療が困難であり、死亡率が高いとされています。また、EBウイルス陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は高齢者に多く見られ、予後が芳しくありません。これらの疾患に対する革新的な治療法が求められています。
3. iPS細胞由来キラーT細胞療法の特徴
研究チームは、iPS細胞技術と遺伝子編集技術を駆使して、健常人から得られたキラーT細胞を使用し、EBウイルス特異的なキラーT細胞を大量に生成します。この技術により、T細胞の疲弊を抑え、効果的な攻撃力を維持した細胞を得ることが可能となります。さらに、このT細胞は、患者の体内での攻撃を抑えることができるように設計されています。
4. 治験のスケジュール
2025年8月から行われるこの治験は、EBウイルス関連リンパ腫や慢性活動性EBウイルス病の患者を対象に、5つのコホートに分けて実施されます。最初にリンパ球除去療法を行った後、iPS細胞由来のCTLを投与します。治験が成功すれば、今後の第II-III相試験への展開が期待されています。
5. 今後の展望
本治験が予定通り進めば、これまで効果的な治療手段が存在しなかった再発・難治性のEBウイルス関連リンパ腫や慢性活動性EBウイルス病に対して新たな光が差し込むことになります。今後の研究と臨床試験が患者にとっての希望となることを期待しています。
用語解説
- - 医師主導治験: 医師が計画し実施する治験。
- - EBウイルス: ヘルペスウイルスの一種で、リンパ腫やがんの発生に関与しています。
新たな治療法が現れることで、患者の生活の質が向上することを願っています。