放課後の居場所の質が子どもに与える影響
最近、放課後の居場所の質が子どもの気持ちや行動に与える影響についての調査が始まりました。このプロジェクトは、特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクールと一般社団法人エビデンス共創機構の共同研究によるもので、2024年6月から2027年3月末までの約3年半にわたって行われます。
調査の目的と背景
この調査は「新・保育環境評価スケール④放課後児童クラブ」(SACERS)を利用して、放課後の居場所が子どもの成長や発達にどのように影響するかを明らかにすることを目的としています。放課後の施設が子どもたちにとって「行きたくない」と思わせる要因が何か、そしてそれを解決するために何ができるのかを探求しています。
近年、放課後の施設が待機児童対策と称して増え続ける一方で、質や環境の評価が不十分で、子どもたちが満足していないケースも目立っています。重要なことは、単に数を増やすのではなく、子どもたちが「居たい」と思える空間を作ることです。何よりも、子どもたちにとって良い環境ではなくてはなりません。
調査の方法と内容
調査の方法としては、各拠点に訪問し、SACERSを用いたうえで、複数回にわたって観察評価を実施します。具体的には、施設職員や利用する子どもたち、その保護者へのアンケートやインタビューを通じて、保育環境についてのフィードバックを収集します。また、SDQ(子どもの強さと困難さアンケート)を用いて子どもたちの観察評価も行われ、彼らの心理的な状態を浮き彫りにします。
これにより、どのような環境が子どもたちに良い影響を及ぼすのか、逆にどのような問題を引き起こしているのかを明確にすることが期待されています。
調査結果とその意義
2024年度の調査では、環境の質が高い放課後施設において、子どもたちが前向きな感情を持つ傾向が確認され、また問題行動が少なることが分かりました。具体的には、施設のSACERSスコアが高ければ高いほど、子どもたちは「楽しい」「安心できる」という気持ちを強く感じ、逆に問題行動が減少することが統計的に示されています。この調査結果は、放課後の環境が子どもたちの感情や行動、ひいては最終的な発達に大きな影響を与える可能性を示唆しています。
施設内で直面している実情として、定員増加に伴い、本来放課後の居場所として設計されていない場所を活用している事例が多くあります。これにより、空間的な圧迫感や騒音問題が発生し、現場のスタッフたちがその改善に苦慮している状況も見受けられます。一方で、SACERSの観点を通してフィードバックを受けたことにより、具体的な改善の方向性が見えてきたというスタッフの声も多く寄せられています。
このような調査を通じて、今後は放課後の質を上げるための具体的な施策が形成されることが期待されています。2025年度には自己評価ツールの開発や改善事例の整理と発信を行い、他の拠点にも展開していくことを目指しています。
まとめ
この調査は、放課後の居場所が質を高めることで子どもたちの成長にどれだけ寄与できるかを実証するものです。「居場所の質の重要性」や「検証の必要性」についての認識を広めることで、より良い放課後の環境が整備され、子どもたちが安心して過ごせる場所が増えていくことを目指しています。放課後の居場所をゴールデンタイムにするために、さらなる取り組みが進められることを期待しています。