住友ベークライト株式会社が水素製造膜の量産プロジェクトを開始
住友ベークライト株式会社は、再生可能エネルギーを基盤としたグリーン水素エネルギーの実用化に向け、水電解用のイオン交換膜の研究開発に取り組んできました。この度、特に水素製造装置に使用されるアニオン交換膜(AEM)の量産体制を確立するための『水素製造機能膜量産準備プロジェクトチーム』が発足しました。
グリーン水素の必要性
現在、水素エネルギーの市場は成長を見せており、特にカーボンニュートラルの達成を目指す政府や企業からの期待が高まっています。しかし、現時点で主流な水素は化石燃料由来の「グレー水素」で、その製造プロセスにおいて大量の二酸化炭素が排出されます。そのため、環境への負荷を軽減するためにも、グレー水素からグリーン水素への転換が求められています。
新たな水素製造技術
従来、水素製造装置においてはアルカリ型やプロトン交換膜(PEM)型が利用されていましたが、最近ではアニオン交換膜(AEM)が新たな選択肢として注目されています。このAEMは、コスト効率が良く、高い発生効率を持つため、持続可能な水素製造に強い期待が寄せられています。
アニオン交換膜(AEM)の特性
住友ベークライトが進めるアニオン交換膜(AEM)は、イオン伝導性に優れ、PFASフリーの素材を使用しています。この膜は、米国オハイオ州にあるグループ会社Promerus, LLCが開発した独自のポリノルボルネン(PNB)を利用したもので、特に耐久性が高いのが特徴です。
設計の自由度と高い性能
ポリノルボルネンは、その構造によって多様な機能性官能基を導入できるため、さまざまな用途に応じた高いイオン導電性を実現しています。この特性により、AEM電解質膜としての適性も大いに期待されています。
プロジェクトの今後の計画
新たにスタートしたプロジェクトチームは、すでに顧客からのラボ評価で良好な結果を得ています。2027年度には生産条件を確立し、2030年度には本格的な量産が見込まれています。また、将来的には年間売上1,000億円を目指す事業として発展していく予定です。
水素製造装置の比較
水素製造方法は種類が多く、アルカリ型(AWE)、プロトン交換膜(PEM)、そしてアニオン交換膜(AEM)型にはそれぞれ特性があります。これらの技術比較において、AEM型は貴金属不要で低コストが期待され、特にカーボンニュートラルな未来に寄与する可能性を秘めています。
住友ベークライトのこの新たなプロジェクトは、水素エネルギーの普及と環境負荷削減に向けた重要な第一歩となるでしょう。今後の展開に注目です。