概要
慶應イノベーション・イニシアティブ(以下KII)が、岡山県に本社を置く株式会社WAKUに対し、第三者割当増資を通じて1.8億円の資金を提供しました。本出資は、次世代型農業資材であるグルタチオンバイオスティミュラントの開発を目指すWAKUの成長を促進するためのもので、その背景には農業を取り巻く困難な現状があります。
グルタチオンバイオスティミュラントとは
WAKUは、植物が持つ天然成分「グルタチオン」を活用することで、作物の耐暑性や収穫量を向上させる技術を開発しています。気候変動に伴い、農業生産は深刻な影響を受けており、日本の農作物でも高温障害のリスクが高まっています。たとえば、猛暑により米や野菜の収量や品質の低下が顕著になっています。
こうした背景から、作物のストレス耐性を高めるバイオスティミュラントが注目されています。特に欧州では法整備が進んでおり、グローバル市場は2028年までに年平均11.8%の成長が予測されています。WAKUは、この流れに乗り、グルタチオンを利用した新技術の展開を計画しています。
今回の資金調達の意義
今回の資金調達により、WAKUはグルタチオンをベースにした新しい製品の開発を推進し、営業組織の強化や海外市場への展開を加速させる見込みです。これにより、農作物の生産性を向上させるだけでなく、環境負荷を軽減し、持続可能な農業の確立への貢献が期待されます。
WAKUとは
WAKUは2022年7月に設立されたスタートアップで、グルタチオンを利用した農業資材の研究開発や製造、販売を行っています。CEOの姫野亮佑氏の指導のもと、同社は国内外における実証研究を開始し、将来的な国際展開を目指しています。
KIIの役割
KIIは、2015年に設立され、慶應義塾大学の研究成果を基にしたスタートアップを支援することを目的とした法人です。最近では、インパクトファンド「KII3号インパクトファンド」を設立し、社会課題の解決だけでなく、投資による環境的・社会的インパクトの創出を目指しています。
結論
日本の農業が直面する課題に対してWAKUが打ち出すグルタチオンバイオスティミュラントという新たなアプローチは、持続可能な農業の実現のみならず、安定した食料供給体制を構築するための重要な要素となるでしょう。KIIの出資により、WAKUはそのミッションを加速し、未来の農業を形成する基盤を築くことが期待されています。これからの展望に、ぜひ注目していきたいところです。