日常に潜む年齢偏見を可視化する研究
近年、社会の高齢化が進む中で、高齢者に対する偏見、すなわちエイジズムの問題が浮上しています。特に日本では、年齢による差別や偏見が日常生活の中で顕在化していますが、その影響を評価するための具体的な尺度が存在しませんでした。そこで、千葉大学と京都大学、北海道大学の研究チームが新たに開発したのが「日常的エイジズム尺度(EAS-J)」です。この研究の目的は、高齢者が経験する日常の偏見を数値化し、その影響を明らかにすることにあります。
EAS-Jの開発背景
本研究は、米国で開発されたEveryday Ageism Scale(EAS)を元にしており、日本の文化に最適化した日本語版の尺度です。世界保健機関(WHO)が2021年に報告した内容に基づき、エイジズムを公衆衛生上のグローバルな課題と位置づけています。
日本では、年齢に基づく固定観念や偏見が多く存在し、高齢者がしばしば「耳が遠い」「物忘れが激しい」といったネガティブなイメージにさらされます。これに対抗する形で、「EAS-J」は、日常的エイジズムの影響を測定する手段として開発されました。
研究の成果と結果
研究チームは、62~75歳の高齢者6名に対して認知的インタビューを行い、10項目からなるEAS-Jを作成しました。その後、60~79歳の男女1,500人を対象に全国オンライン調査を実施し、EAS-Jの心理測定特性を確認しました。結果として、良好なモデル適合度、信頼性および妥当性を持つことが明らかになりました。興味深いことに、偏見を多く経験している高齢者は、孤独感やストレスを高く感じる傾向があることがわかりました。
特に、「内面化されたエイジズム」という概念は、他のエイジズムの要素よりも孤独感と強く関連しており、心の健康や自尊心とも関係があることが示されています。
今後の展望と社会への影響
今後は年代や地域、生活環境などによるエイジズムの影響をさらに深掘りし、エイジズムを減らすための教育プログラムや世代間交流の活用を目指すとしています。本研究は、エイジズムの理解と、その解消に向けた社会的取り組みを支えるための基盤となるでしょう。高齢者がよりよい生活を送れるよう、さまざまな取り組みが期待されます。
研究結果の発表
本研究は、2026年7月に学術雑誌「Geriatrics & Gerontology International」で公表される予定です。これにより、エイジズムに関する研究の進展がさらに促進されることが期待されます。
この研究成果は、公益財団法人総合健康推進財団や日本学術振興会の支援を受けたもので、実際に今後の高齢社会における課題解決に取り組むきっかけとなるでしょう。